インフォアジャパンは8月28日に、「Business Innovation Day Tokyo 2015」を開催。同日、クラウド型アプリケーション群「Infor CloudSuite」の強化に向けて、「Infor CRM」を2016年4月までに提供を開始することを発表した。

同日行われた記者発表会では、米インフォアのアジアパシフィックプレジデントのティム・モイラン氏と、エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョン・フレビン氏が、インフォアのクラウド戦略について解説した。

米インフォア アジアパシフィックプレジデント ティム・モイラン氏

モイラン氏は、「これまでオンプレミスの環境だった大企業も、クラウドの利用を模索し始めている。多くの人は、クラウドをコスト削減のために導入することを考えているが、ほかにもクラウドを導入すべき理由はある」と述べ、3つのポイントを挙げた。

「1つめは、クラウドはオンプレミスにはないイノベーションを提供できること。2つめは、リスクを転換できること。インフラやハードウェアの管理にはリスクが伴うが、このリスクをクラウドに特化したベンダーに任せることによって、企業は自社のコアビジネスにより注力することができる。3つめは、柔軟性があること。ビジネスの成長にあわせて、スケールアップなど調整することが可能だ」(モイラン氏)

これらの理由から、同社はクラウド戦略の柱として、次の4つのソリューションを掲げている。

  • Infor Upgrade X
  • Infor CloudSuite
  • Infor CloudSuite Business
  • ベスト・イン・クラス

「Infor Upgrade X」は、オンプレミスのERPを最新版にバージョンアップしながら同時にクラウドERPへと移行するためのソリューション。「Infor CloudSuite」は、業界特化に着眼したクラウド型アプリケーションの総称。「Infor CloudSuite Business」は、新たにサービス業界へ特化させたアプリケーション。「ベスト・イン・クラス」では、人材管理(HCM)や企業設備資産管理(EAM)、顧客関係管理(CRM)など、ERPで取得した情報をより活用できるようにするためのソリューションを展開している。

米インフォア エグゼクティブ・バイスプレジデントのジョン・フレビン氏

フレビン氏は、同社の戦略における、3つのポイントについて説明した。

1つめは、"マイクロバーティカル"という考え方だ。「Infor CloudSuite」では、製造業やヘルスケアなど、業界ごとに細分化され、それぞれに適したアプリケーションが用意されている。コアとなる各ERPシステムのデータベースに基づきながら、それぞれのアプリケーションが運用されるという仕組みだ。製造業向けのアプリケーション「Factory Track」の場合だと、在庫管理から従業員の勤怠管理、出荷までの一連の流れを、統合的に把握することができるという。

「Infor CloudSuite」が網羅する業界

業界をコアとして考え、業界ごとに適したアプリケーションで構成するマイクロバーティカル

「Factory Track」

2つめのポイントは、インターネットの活用だ。

「10~20年後の製造業界を予測すると、これまでの変化を振り返ればわかるように、どんどんスピードが速くなっていくだろう。自動車の購入も今ではオンラインで申し込みができ、生命保険もインターネットで各社から見積請求し、自分で比較することができる。あらゆる業界でインターネットをベースにビジネスが考えられてきている」(フレビン氏)

製造業でもIoTの技術は既に導入されており、「現在自動車に整備されているセンサーの数は、5年後には2倍になるのではないか」と、フレビン氏は予測する。

「製造業の新時代では、多様化するグローバル市場に製品やサービスを提供するために使う人材や機械と同様に、情報を巧みに使えるアジャイルなネットワークエンタープライズが特徴的になる。アジャイルなシステムを導入しない企業は、経済の変化についていけなくなるだろう」(フレビン氏)

3つめのポイントは、ユーザーエクスペリエンスである。マイクロバーティカルとインターネットを活用して、簡単に使えるソフトウェアを提供することだとしている。

米インフォアは現在、クラウドコマースネットワークを展開するGT Nexusの買収を進めており、この9月に完了する予定とした。GT Nexusのプラットフォームを活用することによって、どこに在庫があるのかといった情報を、把握することができるようになるという。

インフォアジャパン 代表取締役社長 尾羽沢功氏

インフォアジャパン 代表取締役社長の尾羽沢功氏からは、「Infor CRM」を導入することによるメリットについて、次のように説明された。

「これまでのERPとCRMは、ERPの中にあるCRMをそのまま利用するか、別々のERPとCRMを無理やり接続するかの二択だった。前者は、CRMとして十分な機能が用意されている状態ではなく、後者は、インテグレーションのコストが発生し、シームレスな連携ができないため効果も出にくいなど、さまざまな課題があった。『Infor CRM』であれば、シームレスな統合が可能となり、TCOを大幅に削減することが可能となる」(尾羽沢氏)

インフォアジャパンは、今後「Infor WMS(倉庫管理システム)」や「Infor HCM(人材管理システム)」も近々日本市場で展開する予定だとした。