日本オラクル 常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド統括本部長 桐生卓氏

日本オラクルは8月26日、ERP/EPMクラウド事業戦略に関する説明会を開催した。同社は2016年度のSaaSビジネスの取り組みとして5つの柱を立てているが、その1つが「ERP/EPM Cloud」となる。

ERP/EPMクラウドを統括する、常務執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ERP/EPMクラウド統括本部長の桐生卓氏は、ERPの近年のトレンドとして、2層型の導入が進んでいると説明した。

導入とは、コアとなるERPとしてはグローバルで利用されるパッケージを採用し、事業や拠点単位でローカルのERPを採用し、双方のERPにおいてデータ連携を図るものだ。

2層型のERP導入モデルのイメージ

その目的としては、顧客や市場への最適化を図ること、迅速にビジネスを立ち上げること、事業再編やM&Aなどがあるという。

迅速な立ち上げが求められる「ローカルERP」にはクラウド型のERPが採用されるケースが多く、同社としてはこの市場を狙っていく。

しかし、桐生氏はこの「2層型ERPモデル」には、とりあえず単機能で安価なサービスや、現場レベルでバラバラにサービスを導入した結果、各サービスやシステム間で連携できないという問題が起こっていると指摘した。

そこで、同社としては、「地域統括管理が可能」「広い言語や各国の法制度に対応」「多様な業種・業態への対応」「他の業務領域への拡張と連携」が可能な同社のOracle ERP/SCM Cloudによって、この課題を解決していくという。

桐生氏はOracle ERP/SCM Cloudの特徴として「業務統合性」「データ統合性」「セキュア」を挙げた。

業務統合性とは、企業の基幹業務を網羅しているうえ、各業務を全体最適化して稼働させるためのビジネス・プロセスを実装していることを指す。データ統合性とは、データモデルが単一であるため、業務とビジネス・プロセスを統合して、ビジネスデータをそのまま活用できることを指す。また、高いコンプライアンスを確保したデータセンターを活用しており、Oracle Application Cloud環境では統合されたID管理が行えるほか、顧客ごとにデータベースが切り離されており、「セキュア」な環境が保たれている。

OracleのSaaSがカバーできる業務範囲

競合のERPベンダーに対するアドバンテージについては、「今、ERPには新たなプラットフォームへの対応が求められている。競合の場合、再構築するしかないのに対し、われわれはPaaSを用いてデータを移行することもできるし、ERP Cloudに移行するという手段も利用できる。さらに、SaaSをつなげていくことができ、新たな機能を使いたくなっても開発する必要がない。また、競合はERPの上流工程となるマーケティング、営業関連といったソリューションが欠けている」という説明がなされた。

同日、製造業の製品企画を支援する新たなクラウドサービス「Oracle Innovation Management Cloud」が発表されており、同サービスの紹介も行われた。

クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・プロダクト本部 ビジネス推進部 担当ディレクターの中島透氏は、「PLMに近い製品だが、PLMが製品開発・設計の効率化や迅速化を実現するのに対し、Oracle Innovation Management Cloudは製品設計に入る前の製品企画を支援するもの」と、新製品の特徴を説明した。

製品設計の前に、事業の方向性、製品企画、法律関係など、製品設計の前の段階で考えるべきことがたくさんあり、その中でどの製品に注力すべきかについても決める必要があるが、これらに関わる情報を管理できる手段が「Oracle Innovation Management Cloud」となるという。

「Oracle Innovation Management Cloud」のコンセプト

「Oracle Innovation Management Cloud」の主要機能

「Oracle ERP Cloud」の1つである複数のプロジェクトを管理する「Oracle Project Portfolio Management Cloud」、製品ライフサイクル管理アプリケーション「Oracle Product Lifecycle Management」と連携することにより、商品化に向けた一連の流れを一元的に管理することが可能になる。

中島氏によると、グローバルではすでに10社が採用しており、5万ユーザーの契約がなされているという。