日立製作所(日立)は8月25日、日立物流の協力のもと、物流倉庫での集品作業の自動化に向けた自律移動型双腕ロボットの制御技術を開発したと発表した。

同技術により、双腕型ロボットが目的の商品が保管されている棚まで移動して商品を取り出し、箱詰めまで行うことができるようになる。移動しながら目的の商品を見つけてアームをのばす動作や、1本のアームでは取り出せない商品を2本のアームで取り出す動作など、人と同様の動作が可能になるという。

同制御技術の開発にあたり日立は、走行台車の上に、高さを調節する昇降台を載せ、2本の市販の産業用アームと、手に相当するグリッパを搭載したロボットを製作。柔軟で素早い動作を実現するためには各機構を連携させる必要があるが、各機構間で頻繁に通信を行うと通信量や演算量が膨大となる。これに対し新開発の制御技術では、各機構を少ない通信量で効率的に連携させることができる。ロボットが動作するにあたって各機構が必要とする最低限の情報や、各機構が動作する際の適切なタイミングを事前に定義することで、通信量を抑制するという。

具体的には、商品の取り出し動作の際、走行台車は商品保管棚に到着する1mほど手前でカメラを搭載するアームに商品を認識するように通知し、それを受けたアームは停車予定位置でグリッパが商品の直前に来るようアーム自らが動作しつつ、昇降台に動作開始を指示する。走行台車は停車直後に、停止予定位置とのズレをアームへ通知し、アームがその情報に基づいてグリッパの位置を補正することで、停止直後に素早く正確に商品を取り出すことができる。

また、2本のアームを用いて商品を取り出す際、取り出す商品の材質やグリッパの性能に基づいて、アーム同士に多少の位置ずれが生じても動作を継続できる許容範囲をあらかじめ登録しておくことで、アーム同士が相手の姿勢に厳密に合わせることなく連携することができ、片方のアームで商品を支えながら一方のアームで商品を取り出すといった連携動作を一度の通信で行うことが可能だ。

日立によれば、商品を取り出す作業において、各機構が連携していないロボットが7秒かかっていたものを、同制御技術を用いることで3秒へ短縮することができたほか、1本のアームでは取り出せない箱を片方のアームで支えて取り出す動作や、保管箱の中に入っている500mlペットボトル飲料を引き出して取り出す動作、片手に持っている箱に商品を詰める動作など、倉庫の集品作業に必要とされるさまざまな動作を素早く確実に実行できることを確認したという。

近年、通販市場の拡大やニーズの多様化に伴い、多品種少量の商品を扱う倉庫が増えている一方で、こうした倉庫ではさまざまな形状や重さの商品に対応するため、集品作業は主に人の手によって行われており、同制御技術を搭載したロボットを活用することで、集品作業を効率的かつ安定的に実施することが期待されるとしている。

制御技術の開発のために製作した自律移動型双腕ロボット