【祝!のはずでした...】113番目の元素 命名権を日本の理化学研究所が獲得!?(雨宮崇)

 

こんにちは!雨宮です。

つい先日の2015年8月12日、日本の科学史に残るビックニュースが発表されました!
...いえ、【されるはずでした】。。。

どんなビックニュースを期待していたかというと、
「113番目の元素の命名権を、理化学研究所の研究グループが獲得!」
というニュースです。

もし現実になったら日本の科学史に残る快挙だったこのニュース。
先日まで韓国で開かれていた国際学会で、「命名権がどの研究グループに与えられるか」が決まるはずだったのですが、どうやら今回は決まらず、次回以降の会議に持ち越されるようです。

個人的にとても楽しみにしていたので、命名権決定が延期になってしまい非常に残念なのですが。。
でも!せっかくの機会ですので、このブログで
・命名権のニュースはどれくらいすごいことなのか
・そもそもどんな研究がされているのか
などについてお話ししていきたいと思います!

◆目次◆

1.113番目の元素とは?
2.命名権獲得ってどのくらいすごいの?
3.誰がどんな研究をしているの?
4.今後研究はどんな方向に向かうの?

それでは、早速参りましょう。

1.113番目の元素とは?
自然界には、もっとも軽い水素から、炭素、鉄、さらにはウラン、もっとも重いプルトニウムといったように、たくさんの物質がありますが、そういった身の回りにある物質は、この宇宙に存在するすべての物質のうちの、ほんの一部です。

物質の単位である元素は、「電子と原子核」から成り立っていて、さらにその原子核は「陽子と中性子」がいくつか組み合わさってできたものです。

元素の種類陽子の数で決めています。例えば、陽子の数が6つならば炭素、7つなら窒素、8つなら酸素となります。

しかし、たとえば同じ炭素でも中性子の数によって、いくつかの種類があります。炭素の場合、陽子6つに中性子が6つの炭素12が最も多いですが、中性子の数が7つ、8つの炭素13や炭素14も知られています。これらはどれも「炭素」ではありますが、性質は少しずつ違います。つまり、原子核にある陽子と中性子の数の組み合わせが異なれば、たとえ同じ元素であっても性質も異なったものになるのです。

その陽子と中性子の組み合わせ方には、約1万通りもの種類があると理論的には推定されていますが、実際に天然に安定して存在する原子核は、たったの約300種。そのほかの原子核は、短い間に核分裂をおこして、他の原子核に変化してしまうのです。

だから、不安定な原子核を見つけることは難しく、これまでに存在を確認できた2800種の他に、いまだに姿をとらえられていない幻の物質が約7000種もあるといわれています。

そのような未知の物質探しを、世界中の科学者は取り組んでいるのです。

このように1万種もあるかもしれない原子核を、陽子の数が同じものに名前をつけて分類し、さらに似たような化学的性質のものに○○族というグループ名をつけてきれいに並べたものが「周期表」です。

タイトルにある「113番目」とは、周期表の113番目の元素のことです。

20150815_amemiya_01.jpg

提供:国立研究開発法人 理化学研究所

周期表といえば「すい、へい、りー、べ...」という呪文のような言葉でおなじみですが、そのまま113番目まで呪文を続けると(名前が付いていないので読めませんが...)、今回注目している元素にあたります。

20150815_amemiya_02.jpg

ここ、当然今は元素名もなく、空いています。

すでに名前のついている112番目の「コペルニシウム」と114番目の「フレロビウム」があり、その間に、今回日本の研究所に命名権獲得の可能性があった元素があります。

個人的には、命名権を獲得したら、「日本人がノーベル賞受賞!」というニュースに勝るとも劣らない歴史的快挙だと思っているのですが、では、命名権の獲得とは、どれくらいすごいことなのでしょうか。
そこのところを、2章でお話ししていきます。

2.命名権獲得ってどのくらいすごいの?

そもそも、「新元素の命名権をどの研究グループに与えるか」を決めるのは、どのような機関なのでしょうか。

その答えは、「IUPAC(International Union of Pure and Applied Chemistry)とIUPAP(International Union of Pure and Applied Physics)という2つの国際学会が共同で設置する委員会」です。(先日まで、その会議が韓国で行われていたのです。)

しかし、その委員会に「113番目の元素を発見した!」と報告している研究グループは、実は日本からだけではなく、ロシアからもあったのです。

ロシアといえば、アメリカやドイツと並ぶ、新元素の命名権獲得の常連国。そんなロシアよりも、日本の研究の方が確度は高いと認められれば、もうそれだけでもすごいことです。

さらに、過去の日本人の研究成果として、幻の元素「ニッポニウム」という話もありました。

時を遡ること、およそ100年前。
日本人の研究者である小川正孝が、化学的な分析手法により「トリアニト」という天然の岩石の中から新元素の分離に成功しました。小川はその新元素の原子番号を「43番」と同定し、「ニッポニウム」と名付けました。

しかし、後になって、小川が発見した元素の本当の原子番号は「75番」であることが判明。そのころには、すでにドイツの研究者が原子番号75の元素に「レニウム」という名前を付けていたのです。43と75では、ずいぶん違うように思えますが、周期表を見ると、縦に並んでいることがわかるかと思います。周期表で縦に並ぶ「族」は、化学的な性質が似ていることを思い出してください。化学者だった小林は、化学的な性質から43を見つけたと思っていたのですが、それは同族の75番元素だったのです。

こうして、日本初の新元素の命名権獲得は幻に消え、それ以降、日本だけではなくアジアのどの国にも命名権は与えられていませんでした。

そういった背景をふまえると、今回命名権が獲得できれば、日本の長年の夢というだけではなく、アジアの科学史にも残る快挙ともいえたのです。

さて、先ほど「113番目の元素は他国の研究グループも報告していた」といいました。

しかし今回の命名権獲得の大本命は、理化学研究所の研究グループです。
それでは、理化学研究所の研究グループは、他の研究グループに比べ、どこが優れているのでしょうか?
その内容は、3章でお話しします。

3.誰がどんな研究をしたの?

今回、命名権獲得の候補に挙がっていた研究グループの指揮をとっているのが、森田浩介博士です。
20150815_amemiya_03.jpg

写真提供:国立研究開発法人 理化学研究所

森田先生の研究グループでは、加速器を用いて、さまざまな原子核を速いスピードで衝突・合成し、新元素を作り出すという手法をとっています。

今回の113番目の元素は、原子番号30番の「亜鉛」の原子核を加速器で加速させ、原子番号83番の「ビスマス」に衝突させて合成されたものです。
ビスマスの原子核に向かって打ち出される亜鉛の原子核の数は、1秒につきなんと約2.5兆個(!)。

2003年9月に始まったこの研究は、同年12月から2004年7月の中断をはさみながら行われ、ついに2004年7月23日に、初めて原子番号113の新物質を合成することに成功したのです!

生成された新元素は、わずか0.00034秒(!)という短い時間で核分裂をおこし、違う原子核となりました。その後、43秒の間に4回核分裂をおこし、安定な原子核へと変化しました。
このときに発見されたのはわずか1個の原子ではありましたが、113番目の元素を「世界で初めて」実証することになったのが、森田先生の研究グループなのです。

また、森田先生のグループが他グループに比べ評価されるべきポイントは、その「確度の高さ」です。

2004年7月の初成功以来、森田先生のグループはさらなる実験を重ね、2012年まで合計3回、元素113の存在を実証することに成功しています。
1秒につき約2.5兆個もの原子核を打ち出す実験を、約9年間(途中中断もありましたが)おこなって、求めていた元素が得られた回数はたったの3回。ここからも、113番目の元素を作り出すことがどれほど難しいことなのかがうかがえますね...。

森田先生は、調査機器の調節や改善を何度も行い、独自の手法で新元素検出の確度を極限まで上げてきました。
森田先生の、時間や手間がかかっても正確なデータを求めるという、粘り強い研究姿勢が、アジア初の快挙に結び付くのではないかと期待されているのです。

4.今後研究はどんな方向に向かうの?
では、113番目の元素をもし名付けることになったら、そのあと森田先生の研究グループはどこに向かうのでしょうか?
そのヒントは、研究のモチベーションを聞かれたときの、森田先生のこんな言葉からうかがえそうです。

「核図表(原子核の種類を配置した図)の空白を自分の手で埋めてやるという思いで実験を行ってきました」

今回発見した113番元素の先にも、まだ広大な未知の領域が広がっており、森田先生の研究グループは、今後さらなるフロンティアの拡大を目指して、まだ周期表で埋まっていない119番元素の合成、そしてさらに重い元素の合成に挑まれるようですね。


日本初・アジア初となる新元素の命名権がどこに与えられるのかを今後も楽しみに待ちながら、
ひきつづき、森田先生の研究チームのご活躍にも注目していきましょう!



Author
執筆: 雨宮崇(日本科学未来館 科学コミュニケーター)
「地球温暖化は俺が解決する!」という熱い想いを胸に、大学院では省エネのための材料研究に没頭。院修了後、理科の面白さを子どもに伝えるためのデジタル教材を開発。「最先端科学に触れたい・伝えたい!」という想いで、2015年より未来館へ。

本記事は「日本科学未来館 科学コミュニケーターブログ」から提供を受けております。
著作権は提供各社に帰属します。


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