大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)、京都大学は8月3日、研究プラットフォーム用アンドロイド「ERICA」を開発したと発表した。

同成果はERATO石黒共生ヒューマンロボットインタラクションプロジェクトの石黒浩 研究総括(大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授、国際電気通信基礎技術研究所 石黒浩特別研究所 所長・ATRフェロー)、京都大学大学院情報学研究科の河原達也 教授によるもの。

「ERICA」は、姿形をコンピューターグラフィックスで合成している点が特長で。鼻と口とあごが一直線上に並ぶというビーナスラインの法則など、多くの美人顔に見られる共通的な特徴を持たせながら、全体としてバランスの取れた顔の造形となっている。また、顔の左右は対称で、日本人とヨーロッパ人のハーフとして見られるように、彫りの深さや鼻の大きさ、高さを調整した。CGで作成した姿形であるため肖像権を持たない点も、研究プラットフォームに適しているという。

研究プラットフォーム用アンドロイド「ERICA」

機能面については、大阪大とATRで開発されたアンドロイド制御システム、音声に基づく動作生成システム、マイクロフォンアレイ技術、京都大学で開発された音声認識システム、対話生成システムを実装。発声から唇の動きや頭部の動きを自動的に再現することで、発話と一致した自然なしぐさを生み出すことができる。音声認識技術は、「Julius」というオープンソース音声認識エンジンにディープラーニングを導入することにより、多様な発音の音声を認識することを可能とした。

音声については、HOYAサービスの協力のもと、「ERICA」のイメージに合う声優の音声を20時間以上収録し、録音した声を音素に分解し、再合成することで、人間らしい音声を追求した。

「ERICA」の身長は立位時で166cmで、頭部を中心に埋め込まれた19本の空気圧アクチュエーターにより、滑らかな動作を実現している。アクチュエーターは2年後に30本まで増やし、腕を含めた上半身が人間らしく動くように改良していく予定だ。この空気圧アクチュエーターの制御に用いる回路はほぼ無音の新しい回路で、大きさも従来の半分以下であることから、アクチュエーターの数を増やしても、アンドロイドの外見に影響を与えることなく、体内に埋め込むことができるという。

同アンドロイドは現在、研究室の来客と対話し、自己紹介をするという限定された状況において、人間の動作や音声を認識し、しぐさを交えて自然に対話することができる。今後、「ERICA」をプラットフォームとした研究により、要素技術を統合的に進化させ、より多様な状況で違和感の無い自然な対話を実現することが期待される。