新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は7月23日、次世代ロボット中核技術の研究開発に着手し、その中で「昆虫の嗅覚受容体を用いた人検知ロボットのための匂いセンサ」を開発すると発表した。

NEDOが次世代ロボット中核技術に位置づけている技術は大きく「革新的ロボット要素技術」と「次世代人工知能技術」の2つに分かれており、それぞれで新しくプロジェクトがスタートする。研究期間は2019年までの5年間で、2年間の先導研究の後、ステージゲートを設けて目標に対する達成度などを鑑みて、研究開発内容や研究開発体制の改廃を行う。

「革新的ロボット要素技術」では、「スーパーセンシング」「スマートアクチュエーション」「ロボットインテグレーション技術」という3つの分野で研究開発が行われる。これらのうち、外乱の多い空間でも的確に信号を抽出できるセンシング技術の実現を目指す「スーパーセンシング」分野での研究の1つとして、昆虫の嗅覚受容体を用いた匂いセンサの開発を東京大学、住友化学、神奈川科学技術アカデミーの3者に委託して行う。なお、開発チームのプロジェクト責任者は東京大学生産技術研究所の竹内昌治 教授が担当する。

「革新的ロボット要素技術」研究開発

「次世代人工知能技術」研究開発

研究開発のスケジュール

昆虫の嗅覚受容体をマイクロチップ化

昆虫の嗅覚受容体は、標的とする匂い分子1個の結合をイオン電流として1千万倍に増幅するという特徴をもつ。また、生体の匂いセンサの優れた点として、人の汗の匂いを高感度に検知できる一方で、匂い分子に対する特異性が高く、汗の匂いでないものには反応しないという性能をもつ。そのため、この機構を組み込んだセンサを開発できれば、人の匂いだけを高感度に検知することが可能となる。さらに、出力が電気信号であるため、匂いセンサとしてマイクロチップ化する際に、デバイスとの相性が高いというメリットも持つ。

昆虫の嗅覚受容体を用いた匂いセンサ

現在、災害時の不明者捜索には捜索救助犬が活躍しているが、集中力が持続しなかったり、指示を出す伴走者が必要となるなどの制約がある。そこで、人の匂いを検知することのできるセンサをロボットに搭載すれば、瓦礫が散乱して視覚が遮られる状況や、捜索救助犬が入っていけない危険な状況でも不明者の捜索が可能となることが期待される。