東京大学(東大)は7月13日、乳腺手術で摘出した検体に対して、試薬をスプレーすることで、数分で乳腺腫瘍を選択的に光らせる技術を確立したと発表した。

同成果は東大大学院薬学系研究科・医学系研究科の浦野泰照 教授らの研究グループと、九州大学病院別府病院の三森功士 教授らの共同研究によるもので、詳細は英科学誌「Scientific Reports」に掲載された。

浦野教授らの研究グループは、これまでの研究で、がん細胞で活性が上昇している特定のタンパク質分解酵素によって蛍光性へと変化する試薬を開発し、がんモデル動物でその機能を証明していた。今回、九州大学病院の三森教授らとの共同研究で、乳腺手術において摘出した検体に対して同試薬を散布したところ、1mm以下の微小がんであっても、散布から5分程度で選択的かつ強い蛍光強度で試薬が光ることを確認した。また、同技術は、幅広い種類の乳腺腫瘍に対して有効であることもわかった。

同技術を活用することで、乳がん部分切除手術中に切断断端に微小がんが残っているかを正確に知ることができるようになるため、局所再発の劇的な頻度低減につながることが期待される。現在、同スプレー蛍光試薬の臨床医薬品としての市販に向け、より多くの症例での実証試験ならびに、体内使用を目指した安全性試験が進められている。

蛍光試薬を用いたがんの検出。肉眼ではがんの範囲は不明瞭だが(左)、試薬を投与して5分経過すると緑色の蛍光が得られる(左から2番目)。緑の蛍光部分(右から2番目)は病理検査でのがん部(右図の緑色)と一致している。