東芝は、HDDの大容量化に向けた技術として、多層化した記録層の磁性体の磁化の向きを、層を選択して反転させることを可能とする技術を開発したと発表した。

同成果の詳細は、7月8日にスペインで開催された国際学会「20th International Conference on Magnetism(ICM2015)」にて発表された。

HDDの1プラッタあたりの記録密度向上に向けた研究として、フラッシュメモリのように磁気の記録層を多層化することが検討されてきたが、10Tビット/inch2の記録密度に達することができる記録原理の技術がこれまでなかった。

今回、研究グループは、層ごとに特定の周波数に反応するマイクロ波磁界を印加する記録方式を用いることで、特定層のみ磁化反転を起こすことを実験で実証したという。この成果について研究グループでは、磁気記録に応用できる基本的な技術であり、高密度磁気記録製品への応用が期待されるとしている。

なお今後については、微細な記録ビットを書き換えるため、局所的なマイクロ波磁界印加が可能なスピントルク発振素子の開発を進め、スピントルク発振素子を搭載可能な磁気ヘッドの開発を行っていくとするほか、多層記録に最適化した記録媒体の開発を行い、2025年ころを目標に3次元磁気記録の実現を目指すとしている。

多層記録HDDの模式図

今回、東芝が実証した多層記録方式の模式図。異なる強磁性共鳴周波数を有する磁性体層を積層し、それぞれの周波数に応じたマイクロ波磁界を印加することで、特定層のみの磁化反転を実現した