政府は6月30日、成長戦略「『日本再興戦略』改訂2015」を閣議決定した。技術や人材を含めた「未来投資による生産性革命の実現」を二本柱の一つに掲げ、イノベーション創出の苗床となる特定研究大学(仮称)の創設など、国立大学と研究資金の改革も盛り込まれている。

「『日本再興戦略』改訂2015」は、日本を成長軌道に乗せるために必要なこととして、新たな成長企業群を作り出す「ベンチャー創造の好循環」を挙げた。新たな技術シーズと経営のプロ、投資家が結びつき、ベンチャー企業を次々に生み出し、それがまた優れた人材と技術と資金を呼び込む―。こうした好循環を作り出す結節点となるのが大学だ、と位置づけている。

国立大学がその役割を十分に発揮できるよう、経営に思い切った自由度を持たせる必要があるとして盛り込まれたのが「特定研究大学(仮称)」の創設。一般の国立大学に比べて高い自由度を有し、収益事業などにより自己収入を拡大でき、企業の投資対象としても魅力的なグローバルな競争力を持つ大学像を描いている。創設に必要な法案を次期通常国会に提出する。

複数の大学、 研究機関、企業、海外機関などが連携して形成する「卓越大学院(仮称)」と、特定研究大学や卓越大学院などで、優れた若手研究者が安定したポストにつきながら、独立した自由な研究環境の下で活躍できるようにする「卓越研究員(仮称)」制度の創設も盛り込まれた。卓越大学院では文理融合領域や IoT(モノのインターネット)・ビッグデータ・人工知能などの新領域・新産業創造という観点に立った研究開発分野の設定を期待している。

昨年までの「日本再興戦略」には、世界のトップ100大学にランク付けされる日本の大学を2023年までに10に増やす、という目標が掲げられている。しかし、英誌タイムズ・ハイヤー・エデュケーションのランキングで100位内に入っている日本の大学は東京大学と京都大学のみ。英大学評価機関クアクアレリ・シモンズ社のQSランキングでも5大学だけだ。こうした現状を紹介した上で、「『日本再興戦略』改訂2015」は、国立大学にさらなる自己改革を迫る施策も盛り込んだ。

その一つが、国立大学法人運営費交付金の重点配分方式導入による大学間競争の促進策。自己改革の評価結果を基に、運営費交付金の額に差を付けるというものだ。

もう一つは、文部科学省と内閣府の大学に対する競争的研究費について、研究費の30%に相当する額を間接経費として競争的研究費を獲得した研究者の属する大学に支給するというものだ。大学改革と研究資金改革を一体的に推進することを狙っている。来年度から新規採択案件について適用し、文部科学省と内閣府以外の競争的研究費については、「総合科学技術・イノベーション会議の下で、間接経費の適切な措置などについて年内に検討を開始し、来年度から順次実施する」としている。

関連記事

「科学技術イノベーション総合戦略2015を閣議決定」

「中国アジアのトップ100大学数で日本追い抜く」