ローランド ディー. ジー.(ローランドDG)は6月11日、浜松医科大学医学部附属病院内に、医療器具・機材の保全・管理にかかわる作業支援システムを構築したと発表した。

同事業は、同社の医療器具用マーキング装置「MPX-90M」と同社が生産現場で活用している「デジタル屋台 」の作業支援システムに関する技術・ノウハウを応用し、浜松医科大学が抱える同大学医学部附属病院の中央診療施設材料部内での、医療器具・器材管理の効率化ならびにそれらの分解・洗浄・組立・滅菌などの作業品質および効率の向上という課題の解決を図ったもの。

「MPX-90M」は、医療器具・器材へのマーキングに特化したドットピン方式の小型マーキング装置。医療器具や器材の各部品にシリアル番号や2次元シンボルを打刻することで、識別性とトレーサビリティーの確保を可能とする。今回のケースでは、中央診療施設材料部が管理する医療器具・器材のうち約4000点にマーキングを行った。また、「MPX-90M」でマーキングしたシリアル番号や2次元シンボルを読み取るための専用バーコードリーダー「MR-1」を開発し、医療機器工業会のガイドラインに従って、マーキングした2次元シンボルを確実に読み取ることができるようにした。

「デジタル屋台」とはローランドDGが自社の工場で取り入れているデジタル方式のセル生産システムで、作業者がパソコンのディスプレイに表示されたマニュアルを確認しながら、工程ごとに必要な部品を自動供給ラックから取り出し、指示された工具を使用して製品を組み立てていくというもの。同病院ではこれを、医療器具・器材の洗浄作業支援システムに応用。従来の紙ベースの作業指示書をデジタル化するとともに、各工程を細分化し、画像を多用することで、誰もが分かりやすい「デジタルマニュアル」を整備した。また、「MR-1」と連動させることで、器具・器材の名称や用途が分からなくても、器具・器材にマーキングされた2次元シンボルをもとに指示書が検索できるようにした。

デジタル屋台を応用した洗浄支援システム

さらに、洗浄支援システムや医療器具の検索・組立支援システムと専用のサーバをネットワーク接続し、各端末での作業指示書の同期を図ったり、作業履歴の管理・分析を通じて改善活動につなげたりすることが可能となった。

ローランドDGは「国内外の多くの医療機関では、浜松医科大学同様、医療器具・器材のトレーサビリティー管理や保全作業品質の向上、効率化といった課題に直面し、解決方法を模索しています。浜松医科大学とともに本システムの研究をさらに推進することで、実用化・事業化に必要なノウハウを蓄積し、世界中の病院が抱える課題を解決する有効なソリューションが提供できるようにしていきたいと考えています。また、システムの販売方法や販売チャネルを整備し、2018年度からは、医療機関に包括的なソリューションシステムを販売する事業を展開する予定です」とコメントしている。