東京大学(東大)と国立天文台は6月9日、アルマ望遠鏡と重量レンズのかけ合わせで、117億光年の距離にある銀河の内部構造を解明したと発表した。

同成果は東京大学理学系研究科の田村陽一 助教と大栗真宗 助教および国立天文台の研究グループによるもので、6月9日付けの「日本天文学会欧文研究報告」に掲載された。

重力レンズとは、質量が時空の歪みを介して光を曲げる減少で、非常に重い天体の周囲で生じ、その向こう側の天体の見かけの姿を拡大・増光する性質がある。

今回の研究では、今年2月にアルマ望遠鏡がとらえた117億光年の距離にあり、爆発的に星を生み出しているモンスター銀河「SDP.81」の画像を、同研究グループが提案した重量レンズ効果モデルを用いて解析した。

その結果、「SDP.81」では差し渡し200~500光年の塵の雲が、およそ長さ5000光年の楕円状の領域に複数分布していることがわかった。この塵の雲は、巨大分子雲と呼ばれる、恒星や惑星が生まれる母体だと考えられるという。また、重力レンズ効果を引き起こしている手前の銀河に質量が太陽の3億倍以上におよぶ超巨大ブラックホールが存在することも判明した。

今後、アルマ望遠鏡と重力レンズの組み合わせで、なぜモンスター銀河が形成されるのか、どのように超巨大ブラックホールが成長するかの解明につながることが期待される。

今回の研究成果を表した図。(Credit: アルマ望遠鏡の画像:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/C. Collao (ALMA) 、地球の画像:気象庁ホームページ)

アルマ望遠鏡と重力レンズ効果の高精度解析により明らかになった「SDP.81」の内部構造モデル(左)と、仮に重力レンズを介さずにアルマ望遠鏡(中央)とハッブル宇宙望遠鏡(右)で見た場合の「SDP.81」の見えかた。