国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)と和歌山県西牟婁郡(にしむろぐん)白浜町は4月23日、NICTが研究開発した「耐災害ワイヤレスメッシュネットワーク」を共同で同町内に構築し、5月3日の「白良浜海開きイベント」で実証実験を開始すると発表した。

東日本大震災を契機にNICTが進めてきた災害に強いネットワークの研究開発の成果の1つが、同ネットワークという。2014年3月に宮城県女川町内に実証ネットワークを設置、主に防災用途として港湾のカメラ映像を同町仮役場内で監視する実証実験を開始しているとのこと。 同技術の実際の利用と普及を促進するには、災害時に加えて平時にも活用できること、つまり防災減災と地域振興の両面で有効性を示すことが重要とし、防災と観光に役立つネットワークに関心の高い白浜町との間で情報通信分野における研究協力に関する覚書を2014年12月に締結し、同町内での実証実験の準備を進めてきたという。

同実験では白良浜に加え、千畳敷や番所山公園といった観光スポットや白浜町役場に「情報通信ステーション」という装置を設置し、一般利用者にWi-Fiによるインターネット接続を提供する。同ステーションは、場所に応じた観光情報や避難所情報を提供し、開発したアプリケーションによる通話やメッセージ交換も可能とのこと。 これらの機能は、インターネットとの接続が途切れた状態でも、情報通信ステーション同士を網の目(メッシュ)状につないで構成するネットワークのみで実現できるのが最大の特長であり、NICTによると世界初の技術とのことだ。

実証ネットワークの構成図

同ネットワークを構成する情報通信ステーションは、通信機能と情報処理機能とを1つにまとめた装置であり、複数のステーションが連携して通信と情報処理を行う。 各ステーションは、観光情報や避難所情報などの情報提供や、ユーザーが発信するメッセージを受け取って他のステーションやユーザーへの配信、ユーザー同士の通話といった機能を提供する。 白浜町には情報通信ステーションを9カ所に設置し、それらを免許不要の無線で相互に接続し、屋外観光スポットにもWi-Fiスポットを設け、最大規模の耐災害ワイヤレスメッシュネットワークを構成したという。

実際の情報通信ステーションの設置例

同実証の一環として、白浜町役場が防災目的で沖合映像監視システムを接続して検証する計画があるという。防災減災や観光振興などに役立つ利用方法を白浜町役場とNICTが共同で検討し、実施していくとのこと。 なお、同実証に関する説明会を5月3日午前9時より、白良浜海開きイベント会場で実施する予定だ。