新宿溝口クリニックの溝口徹院長

4月に入って3週間が経過し、新しい環境での生活に次第に慣れてきた人も多いことだろう。ただ、今頃の季節は、新生活に起因する疲労が蓄積しやすいのをご存じだろうか。

新宿溝口クリニックの溝口徹院長は入学や入社、異動などが多い春から初夏にかけて「新生活疲労」が重症化しやすいと指摘する。

春先は、居酒屋でアルコールを摂取している新入社員らしき姿をよく見かけることも多いだろう。「彼らは新しい生活が始まった不安と高揚感から、アルコールをたくさん飲み大いに騒いでいます。やる気もあるので、毎晩飲み歩いて睡眠不足でも疲れない気がしてしまうのです」(溝口院長)。

ただ、そんなやる気満々だった人でも、いきなり朝に起きられなくなったり、寝ても疲れが取れなくなったりするケースがあると溝口院長は話す。そして医療機関を訪れる際、内臓の疾患を疑って内科を受診するも原因が特定できず、次にメンタル面の疲労を疑うという。このような疲労感は、「栄養失調」によるものだと溝口院長は指摘する。

「新生活への気合が空回りしてストレスとなり、加えて過剰なアルコール摂取のために、神経の働きを正常に保つ働きのあるビタミンBを消費してしまいます。その結果、エネルギー不足が起こり強い疲労感や抑うつ感を引き起こします」(溝口院長)。

さらに、食生活がそのビタミンB消費に追い打ちをかける。忙しい仕事の合間に、コンビニエンスストアで購入したおにぎりやパスタなどで昼食をすませる社会人も多いだろうが、それらの食事から得られる主な栄養素は炭水化物だ。糖質である炭水化物を過剰に摂取すると、その代謝のためにビタミンB群がさらに消費されてしまう。「ストレス」と「偏った食生活」がダブルパンチになるというわけだ。

この特殊な「新生活疲労」は、新社会人だけではなく管理職にも起こりうる。転勤や昇進などをきっかけとして、周囲の期待に応えようという責任感を持つことで、やはり大量にビタミンやミネラルを消費してしまうからだ。

また、なりやすさにも個人差があるそうで、「まじめ」「何にでも一生懸命がんばる」「集中すると一つのことに何時間も没頭する」などの人があてはまりやすい。職業で言えばシステムエンジニア(SE)やゲームクリエーター、編集者などが該当する。

「新生活疲労」の対処法としては「適切な栄養指導+ビタミンB群やその他ビタミン、ミネラルの摂取」があげられる。「長引く原因不明の疲労感はぜひ栄養失調を疑ってほしいです」(溝口院長)。

もうしばらくするとゴールデンウイークに突入するが、連休明けでも疲労感やだるさが抜けきらないようだったら、注意した方がいいだろう。