鉄道博物館(埼玉県さいたま市)にて11日、EF55形式電気機関車の搬入・展示作業が実施された。12日から本館ヒストリーゾーン(車両展示エリア)の転車台上にて展示開始され、11時からセレモニーも開催されるとのこと。

鉄道博物館のヒストリーゾーンへ搬入されたEF55形式電気機関車。1エンド側は流線形のデザインに

EF55形式電気機関車は、1936(昭和11)年に3両製造された旅客列車用電気機関車。欧米で当時流行していた流線形のスタイルを採用(片側のみ)し、特急「富士」「燕」などで先頭に立って活躍した。そのユニークな形状から、現役当時は「カバ」「ドタ靴」といったニックネームが付けられたという。一方で1号機の運転室内に機銃掃射の弾痕を残すなど、戦争の記憶を現代に伝える機関車でもある。

転車台による方向転換を必要とする特殊な形状に加え、戦後は高性能な機関車や電車が次々に登場したこともあり、EF55形式は高崎地区での活躍を最後に引退。1962~1964年にかけて3両とも廃車となったが、1号機のみ解体されずに残り、1986年に国鉄大宮工場(現在のJR東日本大宮総合車両センター)で動態復元された。その後は「ムーミン」の愛称で、2009年まで高崎地区を中心にイベント列車などで活躍した。

EF55形式の2エンド側は切妻形

JR東日本は今年1月、交通博物館(鉄道博物館の前身)と同じ年に誕生した機関車であり、大宮・高崎地区とも縁の深いEF55形式電気機関車を鉄道博物館に展示すると発表。これを受けてJR東日本高崎車両センターに保管されていた同機関車の整備も進められた。

4月11日の同機関車の搬入・展示作業を前に、ヒストリーゾーンの展示車両も変更され、これまで転車台上に展示されていたC57形式蒸気機関車が移動に。公開休止となるDD13形式ディーゼル機関車は館外へ搬出された。DD13形式は大宮総合車両センターに一時保管され、今年度末の展示再開を予定している。

EF55形式が姿を現したのは11日午後。切妻形の2エンド側を先頭に館内へ搬入され、途中、パンタグラフを上げて固定する作業も行いつつ、30分以上かけて転車台への移動が行われた。その様子を来館者らも見守り、機関車の連結が解かれて流線形の1エンド側も見られるようになると、ユニークな形状の先頭部に多くの来館者がカメラを向けていた。

EF55形式電気機関車の展示開始は4月12日11時から。転車台前でセレモニーが開催され、テープカットの他に転車台回転や汽笛吹鳴なども行われる。その後も毎日12時・15時に転車台回転と汽笛吹鳴が行われる予定だという。同機関車については車内(運転室など)の見学はできず、機関車の周囲からのみ見学可能とされている。

EF55形式電気機関車の外観

展示車両の入換作業とEF55形式の搬入・展示作業の様子