政府はこのほど、専門職に就き、高収入を得ている人を労働基準法の時間規制から外す「特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)」、いわゆる「残業代ゼロ制度」を盛り込んだ労働基準法改正案を閣議決定した。

残業代ゼロ制度の対象は、為替ディーラーや研究開発など、高度の専門的知識を必要とする業務に従事し、平均年収の3倍額を相当程度上回る人(年収1,075万円以上を想定)。健康確保措置等を講じること、本人の同意や委員会の決議等を要件として、1日8時間、週40時間などの労働基準法の時間規制から除外し、休日、深夜の労働手当を支払わないようにする。

その上で働き過ぎを防ぐため、「始業から24時間以内に一定の休息を確保し、かつ1カ月当たりの深夜労働の回数を厚生労働省令で定める回数以内とすること」「健康管理時間を1カ月または3カ月について、それぞれ省令で定める時間を超えない範囲とすること」「年間104日以上の休日、かつ4週間で4日以上の休日」のいずれかの措置をとる。また、在社時間が一定時間を超える場合には、事業者はその労働者に必ず医師による面接指導を受けさせるようにする。

労働基準法等の一部を改正する法律案の概要(出典:厚生労働省Webサイト)

今回の改正案には、あらかじめ想定された労働時間以上を働いても追加の残業代が出ない「企画業務型裁量労働制」の見直しについても盛り込んだ。対象業務に「課題解決型提案営業」と「裁量的にPDCAを回す業務」を追加するとともに、対象者の健康確保措置の充実や手続きの簡素化などの見直しを行うとしている。

「フレックスタイム制」についても要件を緩和。労働時間の「清算期間」を1カ月から3カ月に延長する。また、現在は大企業が対象となっている月60時間を超える時間外労働の割増賃金率を50%以上とする規定を、2019年4月から中小企業へも適用する。長時間労働対策としては、事業者は年間10日以上の有給休暇が与えられている労働者に対し、年間5日の有給休暇を時季を指定して必ず取得させるようにする。

改正案は2016年4月の施行を予定している。