本田技研工業は30日、東京・青山のホンダ本社にて、新型2シーター・オープンスポーツ「S660」の発表会を行った。同車は4月2日に発売され、あわせて特別限定車「S660 CONCEPT EDITION」も660台限定で発売される。

発表会の会場に展示されたホンダ「S660」

一昨年の東京モーターショーで「S660 CONCEPT」を発表して以来、約1年4カ月を経て発売される「S660」。発表会に登壇した本田技研工業専務執行役員、峯川尚氏は、「S660に対する期待の中心は本格的なスポーツカーであること。それに応えるべく開発し、6速マニュアルトランスミッションに加えて7速パドルシフト付CVTも設定して、より多くの方々に選びやすいクルマとしました」と説明した。

開発責任者を務める本田技術研究所四輪R&Dセンターの椋本陵氏は2007年入社。現在26歳とのことで、「ホンダの歴史で最も若い開発責任者」と紹介された。「幼い頃からクルマが大好きで、小学校の図書室で見つけた本がきっかけでホンダに憧れました。入社から数年後、研究所50周年を記念した新商品提案企画が行われることを知り、軽スポーツカーを提案。グランプリを獲得したことがS660開発のきっかけです」と椋本氏は説明した。

開発チームは椋本氏をはじめ、若手エンジニアを各領域のプロジェクトリーダーに起用。若手を支えるベテランエンジニアとともに、「S660」の開発が進められたという。椋本氏も、「若者のクルマ離れという言葉も聞き慣れたように感じますが、あえて我々の世代がS660を作り上げることで、『クルマって楽しいんだぜ!』というメッセージをドストレートに発信したい。そんな志で開発しました」と述べた。

「S660」開発責任者の椋本陵氏は作業着姿で登壇。「私にとって正装は作業着。一番しっくりくる格好をあえて選びました」と語った

「S660」は、「Heart Beat Sport」をキーワードに、「見て楽しい」「乗って楽しい」「心昂(たかぶ)る」本格スポーツカーを追求。ミッドシップエンジン・リアドライブ(MR)レイアウトを採用し、曲がる楽しさを最大限体感できるよう、高い旋回性能にこだわった。エンジンには低回転域から力強く、高いアクセルレスポンスを可能にする専用のターボチャージャーを搭載している。

「フロントからエンジンをなくした結果、フロントの低いスーパーカーのようなプロポーションになったと思います。フロントを軽くすることで回頭性が良くなるなど、痛快なハンドリングを実現する上でもメリットが多く、そうした理由からミッドシップを採用しました」と椋本氏。若い技術者を中心に「S660」が開発され、発売に至ったことに関して、峯川氏も「開発の過程で若い方々の活躍する姿も見ることができました。経営陣としても、今回のような機会を増やしていきたい」と話していた。

「S660」は「α」「β」の2グレードを用意し、価格は「β」が198万円、「α」が218万円。特別限定車「S660 CONCEPT EDITION」は、一昨年の東京モーターショーで公開された「S660 CONCEPT」をモチーフに、より上質感のある仕上がりとしたモデルで、価格は238万円(価格はすべて税込)となっている。

なお、同車はホンダのグループ会社である八千代工業四日市製作所にて製造される。少量生産技術で台数を限定しての生産となるため、納期に時間を要する見込み。いまのところ7月以降に工場出荷される見通しで、「S660」特別WEBサイト「GATE660」にて、4月2日に納期見通しが案内されるとのこと。