医学で優れた成果を挙げた研究者に贈られるカナダのガードナー国際賞に、大隅良典(おおすみ よしのり)東京工業大学栄誉教授(70)と坂口志文(さかぐち しもん)大阪大学教授(64)が欧米の3人とともに選ばれた。ガードナー財団が3月25日発表した。同賞は1959年から続く世界的な賞で、これまでの15か国320人が受賞、このうち利根川進(とねがわ すすむ)米MIT教授や山中伸弥(やまなか しんや)京都大学教授ら82人がその後、ノーベル賞を受けている。日本人の受賞は2014年にガードナー国際保健賞を受けた大村智(おおむら さとし)北里大学特別栄誉教授も含めて計12人となった。

写真1. 大隅良典東京工業大学栄誉教授
(提供:東京工業大学)

写真2. 坂口志文章大阪大学教授
(提供:大阪大学)

大隅良典栄誉教授は1990年ごろ、細胞内で不良なタンパク質を分解して再利用する仕組みの「オートファジー(自食作用)」を酵母で初めて観察し、遺伝子レベルの解明の突破口を開いた。この現象は動物や植物に普遍的に起きており、生命にとって欠かせない。その機能に異常が生じると、アルツハイマー病などの神経変性疾患やがんなどを引き起こすため、医療でも重要性が急速に認識され始めている。

坂口志文教授は1990年代に、免疫系で働く「制御性T細胞」を発見し、自分の細胞を殺してしまうような過剰な免疫反応を抑えているという重要な役割を解明した。この制御性T細胞の作用を抑制すれば、自己免疫疾患やがんの治療に応用できるため、免疫学や医学の最もホットな分野のひとつになっている。

大隅良典栄誉教授は東京大学教養学部卒で、基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の教授などを歴任し、2009年から東京工業大学特任教授。今回の受賞について「27年間にわたって、酵母でオートファジー研究に取り組んできたが、このような基礎的な研究が契機となり、大きな研究領域が展開されたことをうれしく思う」とコメントした。

坂口志文教授は京都大学医学部卒、京都大学教授、京都大学再生医科学研究所所長などを経て2007年から大阪大学教授。大阪大学で記者会見し「長年の仕事に対して国際的に認められて大変うれしい。人への貢献、がんや難治疾患の治療にこの研究を生かすことが重要と認識して、研究を続けていきたい」と語った。

授賞式は10月29日、カナダのトロントで開かれ、賞金10万カナダドル(約960万円)が贈られる。

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