日本で売られているCDのジャケットデザイン、どう思いますか?

現在はデジタルデータで音楽を購入する人も増えましたが、やはり手元で見る「CDジャケット」は嬉しいもの。デザインのかっこよさはもちろん、ものだからこそ楽しめるギミックだってあります。多くのジャンルからさまざまなテイストのデザインが生まれている昨今ですが、外国の方にはどう見えているでしょうか。

日本在住の外国人20名に「日本で売られているCDのジャケットデザイン、どう思いますか?」と質問してみました。

■とてもいいと思います。(アメリカ/20代後半/男性)
■きれいだと思う。(チュニジア/40代後半/男性)
■かっこいいと思う。(アルゼンチン/30代前半/男性)
■かっこいい。(ロシア/20代前半/女性)
■特徴的です。(韓国/40代後半/男性)
■シンプルで見栄えはよいです。(フィリピン/40代前半/女性)
■いろいろなデザインがあってすごいと思います。(ドイツ/40代前半/女性)

印象に関する質問だったため、さまざまな回答が集まった今回のアンケート。まずは好評価なものを集めました。「日本で売られているCD」と一口に言っても邦楽から洋楽まで幅広いですが、CDショップ全体としての印象なのでしょうね。ただ特徴的、シンプルと極端な回答もあり、それをまとめているのが「いろいろなデザインがあってすごい」という回答なのでしょう。

日本でCDが普及したのは1984年頃。5万円台のCDプレーヤーが発売されたことがきっかけだそうです。また2000年まではシングル用(レコード時代のA面B面を踏襲した形)8cmCDが販売されており、「短冊」と呼ばれる長方形だったため、写真を縦長にレイアウトしたデザインも存在しました。ここ数年では8cmシングルを12cmで再販した例も増えており、例えばhide/ROCKET DIVEでは、同じ写真素材を用いながらデザインや比率を変えたものであることがわかります。

■オシャレ、現代的。(台湾/40代前半/男性)
■とてもカラフルで凝っていると思う。たまに独特なのもあるが。(イギリス/20代前半/女性)
■写真や色、文字がとてもいいと思います。(タイ/30代後半/女性)
■タイポグラフィのデザインは気に入りました。(スペイン/30代後半/男性)
■特に最近の紙でできたジャケットのデザインはいいですね。(スウェーデン/40代後半/女性)
■アメリカやヨーロッパのデザインとあまり変わらないと思います。(トルコ/30代前半/女性)

デジタルデータの販売が増えた今でも、目に見えるメディアかつデザイン作品としての強度を持つCDジャケットは注目を引く存在です。グラフィックデザイナーの中には「CDジャケットがやりたくて」この職業についたという方も多いと聞きますし、変形ボックスセットが多い相対性理論や、カセットなどを組みこんだtofubeatsなど、ビジュアルは元よりギミックを凝らしたデザインも多々あります。

また、その時代の流行を映す鏡でもあるのが面白い所ですよね。フリッパーズギターやピチカート・ファイヴなど渋谷系全盛だった90年代は、松任谷由実のCDからスタートした、コンテンポラリープロダクションによる仏伊映画などをモチーフにしたスタイリッシュなデザインがジャケットを席巻し、のちにMr.ChildrenやMisiaなど歌謡曲系にも大きな影響を与えました。

2010年以降の目立ったデザイン傾向を探してみると、わたせせいぞうなどのアーバン系・バブル期マンガ風のtofubeats「ディスコの神様」(イラスト:山根慶丈)、ファンシーアニメ系のORESAMA「オオカミハート」(イラスト:うとまる)、デザイナーズ・リパブリック風デザインの上坂すみれ「来たれ! 暁の同志」(デザイン:NC帝國)などがならび、CDジャケットにも80~90年代リバイバルが起こりつつある傾向が見て取れます。もちろんこうした表現だけではないのですが、サブカルチャーだった渋谷系が後に影響を与えた側面を考えると、こうした傾向も見逃せないのではないでしょうか。

■わかる人しかわからないデザインだと思います。(中国/20代後半/女性)
■CDによると思います。かっこいいのもあればそうでもないのもあるかと思います。(マレーシア/30代前半/男性)
■もっとアピールできると思います。(ブラジル/20代後半/男性)
■普通だと思います。(ペルー/30代前半/男性)
■変。(オーストラリア/40代前半/男性)
■あまりCDを買っていないのでわかりません。(ベトナム/30代前半/女性)
■買ったことがない。(イスラエル/30代後半/女性)

CDはある程度売りたいターゲットが決まっているため、その共通言語やアイコンなどもかなり抽出されたものになっていると言えます。「わかる人にしかわからない」という意見も、裏返せば「わかる人にだけは届く」ということ。アピールの仕方はさまざまであり、人によって受け取り方も大きく違い、難しいものでもある。…ということがこのブロックの回答からはよくわかります。

その時代の流行を映すCDジャケット。発売当時にしっくり来ているほど、後に見返すといろいろな違和感を感じるのではないでしょうか。流行の周期は20年ごとに繰り返すと言われており、デザインはその影響も大きい分野でした。しかしiTunesStoreやGoogleの発達により、今や過去すべての情報が並列に表示される時代。今後CDジャケットのデザインはどう変化し、デジタルデータにはどんな形で引き継がれていくのでしょう。興味が尽きない分野のひとつです。