DNA損傷修復の異常が糖尿病の一因

 

DNA損傷の修復や発がん抑制に関わる分子ATMが脂肪細胞の分化を促し、個体の糖代謝を調節していることを、東京医科歯科大学発生発達病態学分野・小児科の高木正稔(たかぎ まさとし)講師らが突き止めた。糖尿病患者が、がんになる確率は平均1.2倍という関連の謎を解く新しい手掛かりになりそうだ。東京医科歯科大学内分泌代謝学分野、国立長寿医療研究センター、国立成育医療研究センター、順天堂大学、ソニー・ライフサイエンス研究所との共同研究で、2月12日付の米科学誌セルリポーツのオンライン版に発表した。

図. DNA損傷の修復と糖代謝の関係(提供:東京医科歯科大学)

研究グループが着目したのはDNAの傷を直すときに働く分子ATM。その遺伝子の変異は、まれな遺伝病の毛細血管拡張性運動失調症の原因であることが1995年、イスラエルの研究者によって発見された。この遺伝病は約30万人に1人の割で発症し、免疫不全や運動失調、毛細血管拡張が起き、がんや糖尿病も合併しやすい。子どもの病気としてよく知られるが、最近、症状の軽い大人の例も報告されている。ATMはがん抑制遺伝子で、がん化の促進は予想されていたが、この病気で糖尿病が発症する原因はこれまで解明されていなかった。

ATMの遺伝子を欠損したマウスで詳しく解析した。正常な脂肪細胞はアディポネクチンなどのホルモンを分泌し、個体の糖代謝を正常に保っている。ATMがないマウスでは、脂肪細胞の成熟に関わる転写因子が誘導されず、個体の脂肪組織が未熟なままだった。その結果、アディポネクチン分泌が減るため、糖尿病を発症することがわかった。この実験でATMが脂肪細胞の成熟に必須であることを確かめ、糖尿病発症に関与する仕組みを解明した。

高木正稔講師は「DNAの傷の修復にかかわる分子が糖尿病発症に関係していることを具体的に示した報告は、これまでほとんどなかった。毛細血管拡張性運動失調症の原因遺伝子から始めたこの研究はマウス実験の結果だが、ヒトでも同じことは起きているだろう。これでDNA損傷修復と糖代謝、発がんとの関連という研究分野が開けた。糖尿病患者に、ATMの異常が潜んでいる可能性もあり、糖尿病の臨床研究の新しい一歩になり得る」と話している。



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