国際科学技術財団は1月29日、2015年(第31回)の日本国際賞の受賞者3人を発表した。「資源、エネルギー、社会基盤」分野で「流域管理の革新的概念の創出と水災害軽減への貢献」に対して高橋裕(たかはし ゆたか)東京大学名誉教授(88)が、「医学、薬学」分野で「遺伝子治療の概念の提唱とその臨床応用」を行ったセオドア・フリードマン米カリフォルニア大学サンディエゴ校教授(79)とアラン・フィッシャー・コレージュ・ド・フランス教授(65)が選ばれた。3人は科学技術を進歩させ、人類の平和と繁栄に著しく貢献した業績が評価された。

写真. 日本国際賞の受賞者に決まった(左から)高橋裕、アラン・フィッシャー、セオドア・フリードマンの各氏(提供:国際科学技術財団)

高橋裕名誉教授は現地調査と綿密なデータ解析を基に、ダムや堤防などを中心とした治水政策から、河川とその流域の自然と人間の共生を考慮した総合的な政策への転換を1970年代に提唱し、治水・利水と河川環境を統合した新しい河川工学の分野を切り開いた。その考え方は1997年の河川法改正の礎となり、日本と自然や社会が似通っているアジアモンスーン地帯の国々でも対策に取り入れられ、水災害の軽減や河川環境の改善に貢献した。

小児科のフリードマン教授は1970年代に遺伝子治療の概念を提唱し、初期の遺伝子治療基盤研究をリードし、「遺伝子治療の父」と呼ばれている。フィッシャー教授は致死的なX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)患児に造血幹細胞遺伝子治療を実施し、遺伝子治療が劇的な効果を発揮することを世界で初めて実証し、2000年に論文を発表した。

受賞者3人は都内で行われた記者発表に出席して、それぞれに喜びを語った。授賞式は4月23日(木)に東京で開催され、賞金は高橋裕名誉教授に5000万円、フリードマン教授とフィッシャー教授には各2500万円が贈られる。