1995年にテレビ放映が始まったアニメーション作品「エヴァンゲリオン」。その20周年を記念して、1月30日、劇中に登場する「ロンギヌスの槍」を本当に月に刺そうというプロジェクトがスタートした。資金はクラウドファンディングで調達する計画。月面レース「Google Lunar XPRIZE(GLXP)」に参加しているチーム「ハクト」が技術協力するという。

発表会には、女優の加藤夏希さん(左)と元JAXA宇宙飛行士の山崎直子さん(右)がゲストとして登場

加藤さんが持っているのが「ロンギヌスの槍」。設定ではもっと大きいが、持って行くのはこのサイズに

ロンギヌスの槍は、エヴァ零号機が使徒を倒すために投げ、そのまま月に突き刺さったという設定のアイテム。今回の「ロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト」では、この名シーンの再現を目指す。アニメ作品と本物の月面を結びつけようとする、非常にユニークな試みと言えるだろう。

プロジェクトのロゴマーク

プロジェクト実行委員会の平井真貴代表によれば、「エヴァ20周年に相応しい壮大で面白いこと」を考える中で、アイデアの1つとして、ロンギヌスの槍を月に刺すという話が出てきたという。「最初は冗談みたいだったが、これがもし本当に実現できたら最高に面白い」ということで、いろいろ手段を探し、出会ったのがハクトだった。

ハクトはGLXPに日本から唯一参加している民間月面探査チームである。重さ8kgと2kgの超小型ローバー(探査車)を開発しており、他チームのランダー(着陸船)に相乗りして、月面まで行く予定だ。先日、GLXPの中間賞を受賞し、賞金として50万ドルを獲得。全18チーム中、受賞は5チームのみで、「トップ5」として認められた形だ。

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今回、ハクトは槍の放出機構の開発を担当する。槍の長さは24cmのミニチュアサイズで、材質はチタン合金。地球からのコマンドにより発射され、その様子をカメラで撮影する。通信速度が遅いため、リアルタイムでの中継は難しいが、撮影後にデータを地球に送信する予定だ。放出機構の重量は、槍も含めて600~700g程度になる見込み。

まずはロケットで打ち上げる

分離後、ランダーが月に向かう

エンジンを噴射して月面に着陸

ハクトのローバーが出るところ

チタン合金製の槍と放出機構

このように月面に刺されば大成功

開発と輸送に必要な資金は約1億円。同プロジェクトでは、この資金をクラウドファンディングサイト「READYFOR」で集める計画だ。実施期間は1月30日から4月5日まで。目標金額の1億円を達成した場合のみ、ファンドは成立し、プロジェクトを実行するが、もし1円でも足りなければファンドは不成立となり、プロジェクトは中止となる。

出資は5,000円から。出資へのリターンは、オリジナルTシャツ(1万円コース)、ロンギヌスの槍のレプリカ(10万円コース)、放出機構の命名権(500万円コース)など。限定1名の1,000万円コースでは、なんと刀匠が作ったロンギヌスの槍(全長3.3m)をもらうことができる。これは「ヱヴァンゲリヲンと日本刀展」で制作されたものと同等になるという。

READYFOR内に同日オープンしたプロジェクトの特設サイト

デモとして出資する加藤さん。どのコースがいいか本気で悩んでいた

ファンド成立後、4月から放出機構の開発を開始。打ち上げ時期は未定だが、2015年末~2016年末になる見通しだ。

なお、ハクトも自身のローバーを月に輸送するため、10~30億円程度の資金を必要としており、スポンサーを募集しているところであるが、今回の放出機構はこれとは別プロジェクトということになっており、クラウドファンディングで獲得した資金は、放出機構のためだけに使われるという。

ちなみに、今回のクラウドファンディングの目標は1億円だが、獲得した資金が多ければ多いほど、ペイロードの重量を増やすことができる。数千万円オーバーしたら、もしかすると槍を「2本セット」で持って行くことが可能かもしれない。まずは1億円を獲得できるのか、そしてどこまで金額を伸ばせるかにも注目だ。

ところでハクトによれば、2月23日に「重大な発表」を行うとのこと。内容については不明だが、おそらくGLXPに関することだろう。ロンギヌスの槍だけではなく、GLXPの方にも注目だ。