東京農工大学(農工大)は1月28日、タンパク質の保持・放出を制御することができる医療用シートを開発したと発表した。

同成果は同大学大学院工学研究院応用化学部門の村上義彦 准教授と同大学院博士後期課程在籍の安齋亮介 氏らの研究グループによるもの。1月25日に国際専門誌「Colloids and Surfaces B: Biointerfaces」電子版に掲載された。

狙った時間と場所に薬物を送り込むドラッグデリバリーシステム(DDS)では、内部に薬物を保持して、その薬物を少しずつ放出するための材料を適切に選択することが重要となる。現状では、ゲル、粒子、シートなどさまざまな形態の材料の開発が検討されている。

これまで、ポリ乳酸など生体適合性が高い疎水性高分子を素材としたシートは報告されていたがタンパク質の保持・放出の制御が困難、細胞増殖効果や創傷治癒効果が高い親水性の薬物(タンパク質)を内部に保持することができない、シート内部における薬物の分散状態を評価することが難しく、材料の性能評価が困難であるといった課題があった。

今回開発されたシートは、内部に性質が異なる高分子ブロックが連結した高分子で形成する高分子ミセルを組み込むことによって上記の課題を解決することに成功。高分子ミセルの組成を選択することによって、タンパク質の保持・放出を制御することが可能となった。また、高分子ミセルを内部に分散させることによって「疎水性シートの内部に親水性の空間を作り出すこと」を実現した。同研究グループはさらに、タンパク質の分散状態を評価する手法として、「拡張フラクタル解析」という解析法を考案した。

シートは取り扱いが容易で、保存安定性が高いため、今回の成果は「外科手術の際に患部に、事前に準備したシートを貼り付けて、薬物を患部だけに放出することによって治療効果を高める」といった新しい外科手術の実現につながる可能性がある。また、同研究で提案された発展的フラクタル解析は医療用シートだけでなく、ゲル・粒子など他の形態の材料の内部状態評価に適用することができ、幅広い研究領域での活用が期待される。

シートの外観