大阪大学(阪大)と島津製作所、神戸大学、宮崎県総合農業試験場は1月27日、超臨界流体技術を用いて、多成分の一斉分析を全自動かつ高速に行う画期的な分析システムを開発したと発表した。

同成果は、同大大学院 工学研究科の馬場健史准教授、島津製作所 分析計測事業部の冨田眞巳部長、神戸大学大学院 医学研究科の吉田優准教授、宮崎県 総合農業試験場の安藤孝部長らによるもの。詳細は、3月8日(現地時間)から米国ニューオーリンズで開催される「Pittcon 2015 Conference & Expo」にて発表される。

従来、食品や血液などの複雑で多くの成分を含む物質を分析する前には、分離や精製といった熟練を要する前処理を人手で行う必要があったため、人為ミスによる回収率の低下や結果のばらつきが発生していた。また、この前処理工程において、空気に触れることで成分が酸化や分解してしまうこともあり、正確な測定が困難になる場合があった。

今回、大阪大学と島津製作所が中心となり、超臨界流体ガスクロマトグラフィ(SFC)装置の開発に取り組み、SFCにおいて重要となる高精度の圧力制御装置を開発した。さらに、並行して、島津製作所、大阪大学、宮崎県が中心となり、超臨界流体抽出(SFE)装置の開発に取り組み、試料の吸着、脱水などのための担体や液体試料の導入技術、多検体に対応したシステム開発を行った。また、SFCとSFEを接続した装置のプロトタイプ機を構築し、大阪大学、宮崎県、神戸大学においてシステムの検証実験を行い、そこで発生した問題の解決に取り組むことで、完成度を高め、装置を製品化した。加えて、装置開発に先行して、大阪大学、神戸大学、宮崎県ではSFC-質量分析(SFC-MS)、およびSFEの技術開発に取り組み、農薬や血液成分のプロファイリングに向けた分析条件や抽出条件、化合物ライブラリを構築した。

さらに、最終的にSFEとSFC-MSのオンライン化(自動化)技術に取り組み、標準試料および実試料(農産物・食品・血液)を用いてシステムの検証を実施した。そして、残留農薬分析や臨床検査における実用的な利用を目指して、多検体のハイスループット解析が可能な超臨界流体抽出分離オンラインシステムを構築したという。

なお、これら開発した分析システムでは、最大48検体に対し、有機溶媒の使用量を削減するとともに、不安定な試料であっても、熟練の技術を要さずに前処理、分離および検出を高感度・高速かつ自動で行える。例えば、食品中の残留農薬の分析では、従来は攪拌や遠心分離などで約35分かかっていた前処理を5分に短縮できるのに加え、有機溶媒の使用量をおよそ1/10に削減することができ、これまで複数の装置が必要だった分析も、この分析システムだけで約500種類の成分を一斉に測定することができるとしている。

研究グループでは、今回の成果が、バイオマーカーの探索による超早期診断やテーラーメイド医療(臨床分野)、薬効分析・毒性評価(創薬分野)、食品中の栄養・機能成分の研究(食品分野)などで活用されるのを期待するとコメントしている。

分析システムの外観

農薬500成分の一斉分析したグラフ