情報通信研究機構(NICT)は1月20日、暗号化したままデータを処理する「準同型暗号」において、暗号化したデータのセキュリティレベルを向上させる新技術を開発したと発表した。新技術によって暗号化されたデータは100年以上保持できるとしている。

新技術の概要

新技術は、データを暗号化する際に暗号文をデータ領域と付加情報の2つに分割保存し、付加情報を伸ばす技術により暗号文のセキュリティを更新するというもの。

暗号化処理の仕組みは、公開鍵とノイズベクトルを使って付加情報を生成し、公開鍵とノイズベクトルで平文ベクトルのスクランブルを行う。付加情報には、平文ベクトルのスクランブルを解除する際に必要な情報を含んでいる。

暗号文は、付加情報とスクランブルされた平文ベクトルの2つで構成されており、対応する秘密鍵で付加情報から復号に必要な情報を復元し、その情報とスクランブルされた平文ベクトルによって元の平文ベクトルを復元できる。

暗号化と復元処理の仕組み

また、データの暗号化の速度も従来より向上している。クラウドサーバー上での統計処理を想定した実証実験では、100万件のデータに対する線形回帰計算を暗号化したまま行ったところ、30分程度ですべての処理ができたという。

セキュリティレベルを更新する機能を持たない従来研究と同じデータで比較したところ、平均100倍程度高速だと分析している。

さらに、大幅なシステム変更を伴わずに新たな暗号システムへ移行することが可能で、ITコストの節減にもつなげられるとしている。