慶大、廃棄物から多孔質複合厚膜を創製-リチウムイオン電池への応用も

慶應義塾大学は1月8日、廃シリコン粉末を主原料に、特定条件下でのレーザー焼結技術を用いた多孔質の複合厚膜の創製に成功したと発表した。

同成果は同大学理工学部機械工学科の閻 紀旺 教授の研究グループによるもので、1月5日に応用物理学会のレター誌「Applied Physics Express」のオンライン版で公開された。

電気自動車やスマートハウスなどの増加に伴いリチウムイオン電池の高容量化が求められる中、従来の炭素電極の代わりとして、高容量化の見込まれるシリコン電極に関する研究が進められているが、高コストや電池寿命の低下などが課題となっている。

現在、半導体デバイスや太陽電池の生産において大量に発生するシリコン粉末は不純物を含むため、産業廃棄物として廃棄されている。同研究では、この廃シリコン粉末を再利用してリチウムイオン電池負極を製造することを目的に、レーザー焼結技術を用いて銅箔表面への厚膜創製を目指した。

さまざまな条件でレーザー焼結実験を行った結果、シリコンとカーボンナノファイバーとの強固な結合が得られ、ネットワーク構造を有する多孔質複合膜の形成に成功。また、レーザー焼結プロセスの高速化によって、成膜効率や生産コストの課題を克服することに成功したという。

シリコン負極はリチウムイオインを吸蔵すると約3倍の体積膨張が発生し、充放電を繰り返すと膨張収縮により電極の割れや集電体からの離脱が起こり、導電経路が崩壊してしまい電池寿命の低下につながることが知られている。同研究では、多孔質厚膜を用いて体積の膨張を吸収・緩和すると同時にカーボンナノファイバーのネットワーク構造を膜内へ形成させることで膜の割れを防ぎ、電池の長寿命化を可能とした。

同研究グループは、今後は開発した多孔質複合厚膜をリチウムイオン電池負極として使用する際の電気化学特性について研究を進め、同技術の実用化に向けて開発を進めていくとしている。

廃シリコン粉末・カーボンナノファイバー多孔質複合厚膜の模式図

レーザ焼結の有無による充放電後の電極表面形態の違い(左:焼結無、右:焼結有)



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