過去のレポートでも何度か登場したWindows FundamentalsチームのGabe Aul氏は、Windows 10テクニカルプレビューリリース以降、Microsoftのスピーカーとして務めている。公式ブログ「Blogging Windows」でも、ほぼ毎月Windows 10に関する進捗状況を公開してきた。また同氏のTwitterアカウントでは、テクニカルプレビューとセキュリティ更新プログラムの衝突問題など、数多くの情報を得ることができる。そこで今回はAul氏の記事からWindows 10の開発状況に関するレポートをお送りする。

2008年当時のGabe Aul氏

Aul氏は2014年12月17日(米国時間、以下同)掲載のブログ記事で、Windows Insider Program登録ユーザー数が150万人を突破したことを報告するとともに、新たな進捗状況を公開した。ビルド9888やビルド9901といったリーク版Windows 10の存在に触れつつも、10月のファーストリリース以降、初めて12月のアップデートをスキップしたことについて、「1月21日のリリースに向けて、コードの安定化や統合問題の修正、新たなUX(ユーザーエクスペリエンス)のブラッシュアップを実現するためのハードワークに努めている」と現状を説明している。

この状況で気になるキーワードが「FBL_AWESOME」だ。Aul氏は「毎日(デイリービルドに相当するWindowsへ)各コードをチェックインし、開発を続けている。我々は(このビルドを)"FBL_AWESOME"と名付けた」と説明している。FBLという略称の意味は確認できなかったが、Microsoftは以前からパートナー向けビルドに同名を用いてきた。光ケーブルを用いて航空機の飛行制御を行うFly-by-light辺りを引用し、一時的なリリースを意味するのだろう。そしてAWESOMEは「素晴らしい」などを意味する俗語。つまり、現時点で開発チームはWindows 10に自信を持っているのだろう。

冒頭で述べたようにWindows 10テクニカルプレビューを使用するために加わる「Windows Insider Program」への参加者は150万人を超えているが、その中でも約3分の1にあたる45万人は非常にアクティブなユーザーだという。過去のプレビュープログラムと比較したのが下図に示したグラフだ。

Windows 7からWindows 10までの各ベータ/プレビュー版の使用率をグラフ化

Windows 7ベータ、Windows 8デベロッパープレビュー、Windows 8.1ベータ、Windows 10テクニカルプレビュー4つの使用率を比較したもので、横軸はデバイス使用率、縦軸は1日あたりの使用時間を示している。Windows 8.1ベータはもっとも低い数値を示しているものの、Windows 10テクニカルプレビューは4つの中でも好成績を収めていることから、使用頻度の高いPCにインストールしているユーザーが多いことがわかるだろう。

これらの情報分析にはクラッシュログに代表される自動レポート送信機能や、Windows Feedbackによる手動送信情報を用いているが、Aul氏は「トリッキーなバグを捕まえられる。希な例ではエクスプローラーのOneDriveアイコンが、Outlookアイコンと置き換わってしまうバグも見付けた」と語っている。Microsoftは過去のベータ版OSでもWindows Feedbackを用意してきたが、パブリックなプレビュープログラムにおいてはフィードバックの数も段違いなのだろう

Windows 10テクニカルプレビューから、バグの報告やリクエストを開発チームに送信できる「Windows Feedback」

さらに最初のパブリックプレビュー版となるビルド9841から、10月のビルド9860、11月の9879の3ビルドをもとに、一意的なレポート(フィードバック/バグ報告)数をグラフで示している。ビルド9841を例にあげれば、1,000を超えるレポートをMicrosoftは受け取り、そのうち800近くのバグやミスを修正した。3ビルドを合計すると修正点は1,300を超えたそうだ。

テスターから集まったバグレポートの数。濃青色は解決したバグ、薄青色は現在取り組んでいるバグ

ただし、レポートの中にはUX改善といったバグ以外の報告も少なくない。例えば「エクスプローラー起動時に最初に開くフォルダーを選択するオプション」のリクエストが多かったという。その他にもエクスプローラーの「Home」に加わった参照ファイル/フォルダーの列挙を無効にする機能の有無、アニメーション効果の有無なども含まれるが、Aul氏は「公開するタイミングを待っている」と述べるにとどまっている。最終的な判断結果は2015年1月のコンシューマープレビューで明かされそうだ。

筆者はまだ経験していないが、Windows 10テクニカルプレビューでも、BSoD(BlueScreen of Death)が発生する報告例を、ユーザーモードとカーネルモードに分けてグラフで示している。多発しているのはビルド9879にパッチを当てた環境だそうだ。横軸の説明がないため詳細は不明だが、ユーザーモードは最大で9パーセント程度、カーネルモードは最大で32%程度に達している。Aul氏は比較的高いBSoD発生率についてユーザーに詫びつつも感謝し、「Windows 10リリース時は岩のように固くなる」と高い完成度を目指すことを表明した。

カーネルモードに起因するBSoDの発生率

ユーザーモードに起因するBSoDの発生率

Windows 10テクニカルプレビューは、エクスプローラーに潜んだバグが原因でGDIリークやクラッシュを引き起こしているが、この問題を解決する更新プログラムが12月18日にリリースした「KB3025380」だ。このタイミングはFBL_AWESOME以降の更新プログラムにあたり、Windows 10コンシューマープレビューに至るまでも多くの改善が加わっている。

Windows 10テクニカルプレビューは表示言語も英語に限られるため、コンシューマーユーザーが常用するには少々厳しかった。しかし、Aul氏が見せる自信やバグフィックスの状況を鑑みると、あと1月足らずで登場するであろう次のプレビュー版は、トラブル解決のスキルを持つユーザーであれば、既存のWindows 7やWindows 8.1 Updateから移行対象となりそうだ。

阿久津良和(Cactus)