東洋新薬はこのほど、武蔵野大学の油田正樹教授、嶋田努客員研究員と共同で「黒ショウガ」の前駆褐色脂肪組織の分化促進作用および脂肪組織の褐色脂肪化を確認した。

黒ショウガには滋養強壮や冷え性改善効果があるといわれ、脂肪代謝を促進する成分も含まれる

黒ショウガは、タイやラオスの山間部に自生するショウガ科バンウコン属の植物。現地ではお茶やリキュールなどにして飲まれており、滋養強壮や冷え性改善の機能があるといわれてきた。また、脂肪代謝をよりよくすることが期待できる「ポリメトキシフラボノイド」という特徴的な成分が含まれている。

今回は、体内で脂肪を燃やし熱を産生する役割を持つ「褐色脂肪組織」に着目。その発熱能力は骨格筋の70~100倍もあるといわれながらも、ヒトの褐色脂肪組織は加齢と共に減少し中年太りの原因の1つとされている。そのため近年、肥満治療やダイエットの観点から、褐色脂肪組織の活性化に影響を及ぼす機能性食品についての研究が活発に行われてきた。

同社ではこれまでに、黒ショウガの機能性として、動物試験にて体脂肪蓄積抑制作用、体温低下抑制作用、褐色脂肪組織の交感神経活動活性化作用などを確認している。また、天使大学および北海道大学の斉藤昌之名誉教授らと共同で、黒ショウガ摂取によるエネルギー消費量増加作用を臨床試験にて確認し、「第34回日本肥満学会」で発表した。

そこで今回は、黒ショウガの褐色脂肪組織へ及ぼす影響についてさらなる解明を進めるため、細胞試験および動物実験にて検証を行った。

「PPARγ発現亢進(こうしん)作用」

「UCP-1発現亢進作用」

細胞試験では、雄性マウスから「前駆褐色脂肪組織」(※1)を単離し、分化誘導(※2)をかけた2日後および4日後に、黒ショウガ溶液(黒ショウガ群)または溶媒のみ(対照群)を添加した。そして分化誘導6日後に、PPARγ(※3)およびUCP-1(※4)の遺伝子発現量を測定した。

その結果、黒ショウガ群では対照群と比較してPPARγおよびUCP-1の発現量が有意に増加したことがわかった。

「脂肪組織の褐色脂肪化」(丸内の薄い黄緑色部分が褐色脂肪)

動物実験では、2型糖尿病モデルマウス(※5)に黒ショウガエキス混合飼料(黒ショウガ群)または黒ショウガエキスを含まない通常飼料(対照群)を7週間摂取させ、X線CT装置により肩甲骨間の脂肪組織画像を撮影した。

その結果、黒ショウガ群では対照群と比較して肩甲骨間における脂肪組織の褐色脂肪化を確認した。

これらの結果から、黒ショウガを摂取することで褐色脂肪組織を増加させる可能性が示唆された。

※1 前駆褐色脂肪組織:成熟した褐色脂肪組織になる前の未熟な褐色脂肪組織。

※2 分化:機能を持たない組織が特異的な機能を獲得すること。

※3 PPARγ:前駆褐色脂肪組織から褐色脂肪組織に分化させるのに重要な役割を果たす遺伝子。

※4 UCP-1:褐色脂肪組織に存在する遺伝子。ここでは、褐色脂肪組織が熱産生機能を持つことを意味する。

※5 2型糖尿病モデルマウス:肥満と糖尿病を自然発症するマウスで、肥満の研究に用いられる。