東北大学は12月22日、グラフェンを越えると期待されている新材料シリセンの層間化合物CaSi2を合成し、その電子状態を解明したと発表した。

同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)の高橋隆教授、一杉太郎准教授、菅原克明助教らによるもの。豊田中央研究所の中野秀之主任研究員らの研究グループと共同で行われた。詳細は、ドイツ科学誌「Advanced Materials」のオンライン版に掲載された。

シリセンは、硅素(Si)が蜂巣格子状に組んで形成した1枚の原子シートで、炭素からなる同様の原子シートであるグラフェンを越える新材料として近年盛んに研究が行われている。しかし、単離したシリセン原子シートは合成することが難しく、これまでその電子状態は詳しく分かっていなかった。

研究グループは何層も積層させたシリセン層間にカルシウム(Ca)を挿入したCaSi2を合成することで、電子状態の測定に成功した。その結果、シリセンは見かけ上の質量がゼロとなる電子状態を持つことが明らかとなったという。この成果は、超高速電子デバイスへの応用が期待されているシリセンの基盤電子状態の理解と、その材料設計および機能開拓に大きく貢献するものであるとコメントしている。

(a)グラフェン、(b)シリセン、(c)多層シリセン層間化合物CaSi2の結晶構造。グラフェン中には、パイ電子およびシグマ電子と呼ばれる2種類の電子が存在する。これに対し、シリセンはグラフェンと異なり、バックリング構造とよばれる凸凹した構造を有する。また、CaSi2は、シリセンの原子シート間にカルシウムが挿入された構造を持つ