東京工業大学は12月22日、火星の地下に新たな水素の貯蔵層が存在することを発見したと発表した。

同成果は同大学大学院理工学研究科地球惑星科学専攻の臼井寛裕 助教らによるもので、2015年1月15日付(現地時間)の欧州科学誌「Earth & Planetary Science」に掲載される予定。

近年、約30億年より古い地質体を中心に、多くの流水地形や多種類の含水粘土鉱物が相次いで発見され、火星がかつて液体の水が存在しうるほど温暖で湿潤な環境にあったことが示唆されている。一方、現在の火星では少量の氷が発見されるのみであり、「いつ・どのように」水が火星の表面から失われ、現在「どこに・どのような形態で・どのくらい」存在しているのかははっきりとした結論が出ていない。

臼井助教らは、今回、二次イオン質量分析を用いた低汚染での水素同位体分析法を開発し、火星隕石の衝撃ガラスに含まれる微量な火星表層水成分の高精度水素同位体分析に世界で初めて成功したという。その結果、その表層水成分がマントル中に保持されている始原的な水および大気中の水蒸気のいずれとも異なる、中間的な水素同位体比を保持することがわかった。

臼井教授らは、この中間的な水素同位体が、液体の水の循環が活発であった約40億年前の水の水素同位体比を反映していることから、当時の水が氷か含水鉱物として火星地殻内部に取り込まれたというモデルを提示した。さらに、地下に取り込まれた取り込まれた水の貯蔵量は当時の海水量に相当するという計算結果も示した。

今回発見された水素貯蔵層の場所を表した火星の模式断面図。水素貯蔵層は含水鉱物として地中殻に取り込まれるか(上)、氷として凍土層として存在する。

今回の研究で、現在でも火星には大量の水素が氷あるいは含水鉱物として地下に存在していることが示され、地下の水素を利用した火星生命が存在している可能性が示唆されたという。研究グループは、今後、地下水素の存在地域や存在量を厳密に特定するには、火星探査によるグローバルなリモートセンシング観測が必要となるとしている。