国土交通省航空局は12月19日、1月14日に成田空港にてJALのボーイング787-8(登録記号JA834J)で発生したバッテリー不具合に関して、原因は特定できなかったとする調査結果を公表した。

バッテリー外観。一番右の第5セルの安全弁のみ作動

1月14日に成田空港にて地上駐機中のJALの787-8において、整備士が機外に煙が漂っていること、並びにメインバッテリーおよび充電器の不具合を示すメッセージが表示されていることを確認。また、8つのバッテリーセルの内ひとつの安全弁の作動を確認した。

状態としては、メインバッテリーの第5セルが過熱・損傷し、その結果、同セルの安全弁が作動。電解液のガス等はダクトを通じて排気口から外部に排出され、バッテリー覆い箱の周辺機器への影響はなかったという。なお、バッテリー監視装置(BMU)およびバッテリー充電装置(BCU)に異常は認められず、 第5セルに隣接する第6セルは、一部熱の影響等が確認されたものの機能的には問題はなかった。

同事案発生後も、過熱した第5セル以外の全てのセルについて機能上の問題はなく、運航の継続に必要な機能は維持されていたことから、2013年の事案を踏まえて講じた対策が、セル間の過熱の伝播およびバッテリー全体の損傷の防止に有効なものであったことが確認されたという。

バッテリー内部の状況

第5セルの過熱は内部短絡によるものと考えられている。内部短絡を引き起こす可能性のある要素として、 (1)金属片の混入、(2)リチウム金属の析出、(3)電解液の漏れ、(4)セル・ワインディングの皺等の関与を検討。しかし、過熱を引き起こすことを裏付ける客観的な事実を確認することはできず、原因は特定できなかったという。

今後の対応としては、同事案においては3段階の対策のうち、第2段階および第3段階の対策が適切に機能したことにより、運航の安全性は確保されていたものの、利用者の安心を確保する観点から潜在的な要因等についてさらに検討し、セル・バッテリーシステムの信頼性向上が必要と判断した。

このため、ボーイングは設計改善等の検討を加速し、実施する設計変更に係る認証の早期取得および同設計変更の航空会社への早期提供に取り組む必要があるとしている。また、航空会社も同設計変更を早期に採用・実施する必要があるとしている。 航空局は、これらを実現するため、FAA(連邦航空局)、ボーイング、運航者等と引き続き密接に連携という。