衛星でイオン液体電池の充放電に成功

写真. 石川正司関西大学教授らが開発し、ほどよし3号機に搭載されたたイオン液体リチウム二次電池(写真上)。簡素なラミネート外装のみにもかかわらず、超高真空下で作動が可能(写真下)。(提供:関西大学)

新しいイオン液体リチウム二次電池の地球周回軌道上での充放電試験に、関西大学化学生命工学部の石川正司(いしかわ まさし)教授と山縣雅紀(やまがた まさき)准教授がイオン液体電池として初めて成功した。このイオン液体リチウム二次電池は、石川教授と山縣准教授が2006年、独自に設計と開発を行った。通常の電解液の代わりに「イオン液体」を用いており、揮発・引火成分を一切使っていない。軽量で薄く、コンパクトな新型蓄電池で、宇宙用や極限環境用として期待が集まっている。関西大学が12月17日発表した。

このリチウム電池は、東京大学大学院工学系研究科の中須賀真一(なかすか しんいち)教授らが6月にロシアのヤスネ基地から打ち上げて地球周回軌道に乗った超小型衛星「ほどよし3号」に搭載された。地球からの指令で8月に、イオン液体電池として軌道上での充放電に初めて5分間ほど成功し、10月には1時間の充放電試験にも成功した。試験では、衛星の太陽電池の電気で充電し、衛星内部の発熱蛍光体によるヒーター用に放電した。

この電池は、電解系の蓄電池に含まれている溶媒がなく、塩と同じイオン液体を電解液としているため、揮発や引火する心配はない。柔軟で薄いアルミのラミネート外装のみで、超真空の宇宙環境でも使えるようにした。厚さは3~4ミリで、衛星の狭い隙間に置くことができる。実験データからは、頑丈な外装なしで、長期宇宙滞在にもかかわらず、劣化がほとんどなく、地上に設置した同型の電池と全く変わらない性能を発揮した。

この成果は11月以降、国内外のさまざまな講演会や学会などで報告され、米国の宇宙・航空関係者など各方面から高い関心・注目を集めた。ほどよし3号で軌道上の滞在半年を経て、順調に作動しており、石川教授らが運営するベンチャー企業「アイ・エレクトロライト」が性能解析を継続している。

石川正司教授は「宇宙や航空だけでなく、極限環境で、信頼性の高い安全な電池として応用範囲は広い。製造コストはやや高いが、コンパクトで薄型なので、限られた空間に複数使える利点もある。事実上、唯一のイオン液体電池だ。宇宙での充放電の試験結果を学会などで発表したら、反響は大きかった」と話している。

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