15日の日経平均は272円安の17,099円でした。原油急落が世界経済に与えるマイナス影響に焦点があたり、世界的に株が売られる流れを受け、日本株も売られました。

原油の急落は、長い目で見れば、世界経済にプラスです。ただし、短期的には、マイナス面が先に表面化します。足元は、原油急落のプラス面よりもマイナス面が意識されやすい相場になっています。また、朝方、発表された12月の日銀短観がややネガティブであったことも、下げにつながりました。

(1) 朝8時50分発表の12月の日銀短観はややネガティブ

■大企業製造業DI:2012年3月~2014年12月(実績)、2015年3月は予測値

(出所:日本銀行)

日本の景気動向をよく表すとして注目の高い大企業製造業DIは、2013年に大幅上昇しましたが、2014年以降、なだらかな低下が続いています。4月から消費増税で低下するのはわかっていましたが、12月には持ち直すと予想されていました。ところが、今回出てきた値は、12月が微減、さらに3月の予測値も微減でした。景気回復力の弱さが意識されます。ただし、景況判断の分かれ目である±0は上回っていますので、まだ、鈍いながらも回復は続いていると判断されます。

■大企業非製造業DI:2012年3月~2014年12月(実績)、2015年3月は予測値

(出所:日本銀行)

次に注目される大企業・非製造業DIは、持ち直しつつあり、ポジティブでした。

(2) 原油下落で、業績が悪化する石油関連企業

日本は、原油下落でもっとも大きなメリットを受ける国だと考えられます。東日本大震災以降、緊急輸入した世界一割高なLNGの契約が続いており、高いエネルギーコストに苦しんでいるからです。

ただし、プラス効果はすぐには表れません。日本の石油精製会社に70日間の備蓄義務が課せられていて、高値で買い付けた備蓄原油が残っているからです。今期は、備蓄原油に在庫評価損が発生するため、石油精製会社の業績下ぶれが懸念されます。

■石油関連企業の今期経常利益の、会社予想と市場予想

(出所:各社資料より楽天証券経済研究所が作成、市場予想は12月15日時点のアイフィス・コンセンサス予想、昭和シェル石油の今期予想は2014年12月期、他は2015年3月期)

原油備蓄義務を負う石油精製各社(昭和シェル石油(5002)、出光興産(5019)、JXホールディングス(5020))は、在庫評価損の発生によって、今期業績の一段の悪化が予想されます。天然ガスが売り上げの中心となっている国際石油帝石(1605)も業績はマイナス影響を受けます。

住友商事(8053)は、北米で取得したシェールガス権益やオーストラリアの石炭事業などで今期2,400億円の巨額の減損が発生しました。ただし、今期で大きな減損が完了すれば、来期以降、利益は急回復すると予想しています。

執筆者プロフィール : 窪田 真之

楽天証券経済研究所 チーフ・ストラテジスト。日本証券アナリスト協会検定会員。米国CFA協会認定アナリスト。著書『超入門! 株式投資力トレーニング』(日本経済新聞出版社)など。1984年、慶應義塾大学経済学部卒業。日本株ファンドマネージャー歴25年。運用するファンドは、ベンチマークである東証株価指数を大幅に上回る運用実績を残し、敏腕ファンドマネージャーとして多くのメディア出演をこなしてきた。2014年2月から現職。長年のファンドマネージャーとしての実績を活かした企業分析やマーケット動向について、「3分でわかる! 今日の投資戦略」を毎営業日配信中。