三菱電機は12月9日、B4C(炭化ホウ素)スピーカー振動板に新製法を採用し、同素材の振動板としては世界最高の伝搬速度を達成したと発表した。

新製法B4C高音質スピーカー振動板

内部損失と伝搬速度の高さは、ともに優れたスピーカーの振動板に求められている性能だ。内部損失とは、振動がどれだけ収まりやすいかを示すもの。例えば紙のような素材では高くなり、金属のような素材では低くなる。一方の伝搬速度は、振動板を伝わる振動の速度だ。内部損失はその物質自体が持つ特性で、伝搬速度は素材の材質と形状から決まってくる。

現在、スピーカーの振動板で伝搬速度が10,000m/sを超えるものとしては、ダイヤモンド、B4C、ベリリウムの3種類を素材としたものが実用化されている。

三菱電機では1989年より、B4C振動板を使用したスピーカーを製品化している。現行製品では、カーオーディオ用のスピーカーのフラッグシップモデル「DS-SA1」のツイーターにB4C振動板が採用されている。

B4C振動板の製造では従来、溶融した粒子を物体の表面に吹き付けて皮膜を形成する「プラズマ溶射法」という製法が使用されていた。新しく採用された製法は、成型品を加圧せずに高温で焼き固める「新常圧焼結セラミックス製法」。美濃窯業株式会社と産業技術総合研究所が共同開発したもので、2008年に発表されている。

新製法により、従来では不可能だった複雑な形状成型が可能となった。そこで、同社が培ってきたスピーカー音響解析技術に基づき、B4Cの性能を引き出す形状の振動板を設計。従来のB4C振動板の伝搬速度は12,000m/s以下だったが、新製法B4C振動板では、B4Cの理論値(13,400m/s)に近い12,700m/sという高い伝搬速度を実現している。

新製法B4C振動板では、共振が超高域まで発生せず、理想に近いスピーカーの製造が可能となる。同社では今後、この新製法B4C振動板を使用したスピーカーシステムを、自動車向けや家庭向けの音響製品、AV製品向けに展開していくとしている。