日立製作所(以下日立)、みずほ銀行、みずほ情報総研、THEパワーグリッドソリューション(以下THE)は、このたび、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が、「国際エネルギー消費効率化等技術・システム実証事業」の一環として実施するスロベニア共和国(以下スロベニア)におけるスマートコミュニティ実証事業に関して、実証前調査の委託先に選定された。

同実証事業は、日立が実証研究責任者として全体をとりまとめ、3社とともに実証前調査を12月から2015年9月まで行う。その調査結果を踏まえた事業化評価を経て、実証事業を3年間実施する予定だという。

同実証事業は、日本とスロベニアの共同事業となり、スロベニア政府から支援を受けて、現地の企業が参加する予定。実証前調査において、スロベニアの企業と、各実証のスコープや実証場所の選定などを行っていく予定としている。

スロベニアでは、温室効果ガスの排出削減を盛り込んだEU指令に基づき、2020年までに全エネルギーの25%を再生可能エネルギーにし、エネルギー効率を20%改善する目標を掲げている。

一方、配電会社の設備は老朽化が進みつつあるなか、経済成長に伴う電力需要が増加しており、今後配電系統に係わるインフラへの設備投資が増加すると予想されている。さらに、再生可能エネルギーの大量導入による系統への影響も想定されるため、配電系統を高度に管理する技術が必要とされているという。

同実証事業では、日本のエネルギー・環境分野における高度な配電管理技術とICT(Information and Communication Technology (情報通信技術))を活用し、再生可能エネルギーの導入対策などに効果のある配電系統の監視や、電圧調整を最小限の設備投資で実現できるDMS(Distribution Management System (配電系統の制御システム))を導入することにより、配電系統の安定性の確保と効率的な運用をめざすという。また、電力需要家のxEMS(x-Energy Management System (ITを活用した電気やガスなどのエネルギーマネージメントシステム))などを活用しDMSと連携させることにより、ピーク電力の抑制や電力の地産地消などを実現するDR(Demand Response (デマンドレスポンス))電力の最終需要家が電力需給逼迫時などにおいて、電力需要量を低減するように設計されたインセンティブに対応して、通常の電力需要パターンを変更すること)ソリューションの確立を図るとしている。

現在想定している実証事業の内容と参画企業

なお、実証前調査にて、実証事業のより詳細な内容を決定する。

(1)複数の配電会社が共同利用できるクラウド型の統合DMSの開発および実証(日立、THE)

同実証では、スロベニアの複数の配電会社が、共同利用できるクラウド型の統合DMSの技術開発および実証をめざす。統合DMSでは、配電網の電圧や電流などの状態を可視化する機能に加え、再生可能エネルギー導入時の電圧変動を調整する電圧・無効電力最適化機能や停電時の復旧を迅速化する事故検出機能、事故区間判定および事故区間分離・停止・復旧機能を実装する予定。

(2)xEMSと連携したDRソリューションの開発および実証(日立)

同実証では、配電事業者のDMSと電力需要家が導入しているBEMS(Building-Energy Management System (ビルのエネルギーマネージメントシステム))などのxEMSを連携させることで、ピーク電力の抑制や電力の地産地消などを実現するDRソリューションの技術開発および実証をめざす。

(3) ビジネスモデルの検討・構築(みずほ銀行、みずほ情報総研)

上記の統合DMSおよびDRソリューションのスロベニアでの継続的な運用を実現するため、電気事業者や関連法制度などの調査・分析、機器サプライヤーの調査、政府関係者への働きかけなどを通じ、ビジネスモデルを検討・構築し、経済合理性の評価を実施する予定。また、スロベニアと類似した電力システムを有する第三国への事業展開に向けた論点整理のための調査も行う予定。