ヴイエムウェアは11月5日、ソフトバンクテレコムおよびソフトバンク コマース&サービスと共同出資で設立したヴイエムウェア ヴイクラウドサービスを通じてパブリッククラウド「vCloud Air」の国内提供開始を発表したことに伴い、記者説明会を開催した。

VMware CEO パット・ゲルシンガー氏

説明会には、VMware CEOのパット・ゲルシンガー氏とソフトバンクテレコム 代表取締役副社長 兼 ソフトバンク コマース&サービスの代表取締役会長を務める宮内謙氏が参加した。

vCloud Airは、仮想ネットワークやセキュリティコンポーネントを備え、単一の管理ツールを提供することで、仮想マシンの自由な移行やプライベート・クラウドとパブリッククラウド間のスムーズなアプリケーション連携を実現する。同社のサーバ仮想化ソフト「vSphere」を利用している場合、既存システムの拡張リソースとしてvCloud Airを活用できるうえ、vCloud Air上に構築した仮想マシンに変更を加えることなく、プライベート・クラウドへ戻すことができる。

初めに、ゲルシンガー氏は50社以上の企業が参加しているvCloud Airのベータ・プログラムの反応もよく、期待値が高いと、vCloud Airの現状を説明した。

パブリッククラウドと言えば、AmazonやGoogleのサービスが高いシェアを獲得しており、ここ最近、各サービスの値下げが相次いでいるが、同社としてはこうした価格競争に関わるつもりはないという。

その理由について、「vCloud Airはパブリッククラウドといえど、企業向けの価値を付けた形で提供している。企業内のオンプレミスのシステムとシームレスに連携するvCloud Airであれば、データセンターを効率よく利用することを実現する。Amazon、Google、マイクロソフトと十分戦えるサービス」と、ゲルシンガー氏は説明した。

同社が掲げる戦略の1つに「SDDC(Software Defined Datacenter)」があるが、ゲルシンガー氏によると、vCloud Airでは、ネットワークの仮想化において活用されているとのことだ。「vCloud Airでは、物理的なファイアウォール、ロードバランサーを持っていない。このことは、コスト削減に貢献している」と同氏。

ソフトバンクテレコム 代表取締役副社長 兼 ソフトバンク コマース&サービス 代表取締役会長 宮内謙氏

一方、宮内氏は「これまで、企業はオンプレミスのシステムを抱えていたために、クラウドにシフトすることができなかった。しかし、vCloud Airは、オンプレミスのシステムとパブリッククラウドを双方向でリンクすることができるため、企業のクラウド活用を推進するだろう。また、企業がクラウド利用の課題として懸念を抱いているセキュリティについては、当社の閉域ネットワークによって安全性を確保できる」と、vCloud Airビジネスの展望について語った。

宮内氏は今後、企業が競合に対して差別化を図っていく際は「デジタイズ」がカギとなるが、その大きなベースとなるのがヴイエムウェアだと説明した。

ちなみに、800人の人員を抱えるソフトバンクテレコムのIT部門にvCloud Airを紹介したところ、「すぐにでも使いたい」という意見が出たそうだ。用途としては、開発環境での利用が挙がっており、ベータ・プログラムの企業の中にはディザスタ・リカバリの用途で利用している企業もあるとのこと。

なお、ソフトバンクテレコムが現在、企業向けに提供しているクラウドサービス「ホワイトクラウド」は、vCloud Airに集約される方向にあるようだ。宮内氏は「vCloud Airのほうがパフォーマンスがよいから」と、その理由を述べた。

サーバ仮想化プラットフォーム「vSphere」と親和性が高いという強みを持つvCloud Airが、日本企業にどう受け入れられていくのか。また、ヴイエムウェアが提唱する「ハイブリッドクラウド」がどこまで日本企業に浸透するのか。今後に期待したいところだ。