東北大学は10月31日、パーキンソン病の悪化に関連する因子(予後予測因子)の発見に成功したと発表した。

同成果は同大学大学院医学系研究科高次機能障害学分野の森 悦朗 教授、同大学病院高次機能障害科の西尾 慶之 講師、同 馬場 徹 助教、県南中核病院研修医の庄司 裕美子 医師らによるもの。10月20日付け(現地時間)の「PLoS One」のオンライン版に掲載された。

パーキンソン病は運動機能の悪化を主症状とする疾患で、長期の経過中に約8割の患者が認知症になることが知られている。しかし、現時点では病初期の段階で後の認知症の発症を予測することはできていなかった。

パーキンソン病の症状と認知障害の発症時期

同研究では、53名の認知症のないパーキンソン病患者を対象に、3年の間隔を開けて2回の検査を施行し、初回の検査成績とその後3年間の検査成績の変化との関係について調査を実施。患者を以下の5つのグループに分け、運動機能、認知機能(記憶、視知覚、遂行機能)、局所ブドウ糖脳代謝の結果を比較した。

  1. 初年度に認知障害がなく、3 年後にも認知障害のないグループ
  2. 初年度に認知障害がなく、3 年後に記憶障害だけをきたしたグループ
  3. 初年度に認知障害がなく、3 年後に記憶およびその他の認知障害をきたしたグループ
  4. 初年度に記憶障害のみを認めたグループ
  5. 初年度に記憶障害およびその他の認知障害を認めたグループ

その結果、初年度に認知障害を認めなかったグループ(1~3)のうち、1と2のグループの臨床症状、脳代謝パターンが類似していた一方で、グループ3は1、2のグループに比べて初回検査時の側頭・頭頂葉の代謝が強く低下していた。また、グループ3は初回評価時に視知覚障害が認められ、その後3年間の認知機能および運動機能の悪化が重度だった。初年度に認知障害を認めた4と5のグループの比較においても同様の差が認められたという。

認知障害の発症と脳のブドウ糖代謝低下

以上の結果から、記憶および視知覚に障害を認めるパーキンソン病患者は、認知機能はもちろん運動障害も急速に進行する可能性が示唆された。このことは、記憶および視知覚に障害を認めるパーキンソン病患者においては、これまで考えられていたよりも早い段階で大脳新皮質(側頭・頭頂・後頭葉)に神経変性が起こり、これが病状を急速に悪化させる要因になっていると考えられるという。

今回パーキンソン病の悪化要因が明らかになったことによって、予後予測や認知機能障害に対する早期介入に繋がることが期待される。