ガートナー ジャパンは10月29日、「日本におけるテクノロジのハイプ・サイクル:2014年」を発表し、2014年以降の国内の情報通信技術 (ICT) 市場に影響を及ぼすと考えられる主要な40のテクノロジーと関連キーワードを選定し、日本国内におけるトレンドを示した。

同社のハイプ・サイクルは、2000を超えるテクノロジを119の分野にグループ化し、その成熟度、企業にもたらすメリット、今後の方向性に関する分析情報を、企業の戦略・プランニング担当者に提供するもの。

同社は1995年以来、新たなテクノロジーおよび革新的なテクノロジーに伴う大きな期待、幻滅、最終的な安定という共通のパターンを明示する手段として、ハイプ・サイクルを活用している。

今回、2014年以降、特に注目すべきものとして、「コンシューマー3Dプリンティング、エンタプライズ3Dプリンティング」「モノのインターネット」「ビッグ・データ」「クラウド・コンピューティング」「モバイル・コンピューティング」「エンタプライズ規模のアジャイル開発」「OTとITの融合」「セキュリティ・インテリジェンス」が挙げられている。

以下、「コンシューマー3Dプリンティング、エンタプライズ3Dプリンティング」「モノのインターネット」「ビッグ・データ」について紹介する。

コンシューマー3Dプリンティング、エンタプライズ3Dプリンティング

コンシューマー3Dプリンティングは現在、「過度な期待」のピーク期にあり、既存の技術、つまり積層造形技術が簡単に購入できないほど高価なため製造業だけで使用されていた時代から、時を経てコンシューマーの手の届く製品になった例と言えるという。

しかし、3Dプリンタで銃や武器が作製されたニュースも見受けられ、3Dプリンタや3Dプリンタで作製した品物を販売する小売店は、顧客が順守すべき法律について調査を行うとともに、3Dプリンタで作製する品物が、著作権や関連の法律を順守しているかどうかを確認する処置を取る必要があると指摘している。

一方、エンタプライズ3Dプリンティングは幻滅期にあるが、これまでほぼ四半世紀にわたり、主に製品の試作や少量部品の製造に使用されてきた。技術の進展によって低価格製品が登場し、製造業に限らず、企業の業務に幅広く利用することも可能になりつつあるという。

今後は3Dプリンタを使用した新たな用途やビジネスモデルを見つけていくことが重要になる一方、知的所有権侵害への潜在的な懸念が増すとともに、さまざまな業種が影響を受けるようになると予想されている。

モノのインターネット(IoT:Internet of Things)

IoTは、世の中のさまざまなモノがその対象となることから、農業、製造、小売り、流通、運輸、倉庫、医療、教育、公共などのあらゆる分野にわたる企業や公共事業体に影響を及ぼすと見られるという。

企業は、製品やサービスの企画、マーケティングや販売、製造あるいはサービスの管理やデリバリー、顧客サポートなどの側面で、IoTが関連することになると理解すべきだとしている。さらに、企業は「事業部門においてIoTがどのようなビジネス機会をもたらすのか」「新たな脅威と直面する可能性があるのか」などについて、検討を始める必要があるという。

検討を進める際に留意すべき点としては、実現に関するテクノロジーの成熟度、実現するテクノロジーが存在する場合もセンサーや通信デバイスと対象となるモノのライフサイクルの隔たり、そして収集した情報に関するセキュリティやプライバシーが挙げられている。

ビッグ・データ

同社が実施した国内向け調査の結果から、ビッグ・データに関心を持つ大企業が6割に達している一方、その取り組みの実態は情報収集やアドホックな実証実験が中心で、組織的な取り組みは進んでいないということがわかっているという。

そのため、同社はビッグ・データが前年に続き「過度な期待」のピーク期にあると評価しており、今後1年程度で幻滅期に移行すると見ている。このことは、ビッグ・データやデータの利活用に価値がなくなるということではなく、単に何らかのテクノロジーやサービスを適用するだけで大きなビジネス価値が得られるとは限らないことに、多くの企業が気づくということを意味しているとしている。