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猫も夢を見るのでしょうか? 私は猫も夢を見ていると思います。寝ている愛猫がびくびくっと動いたのを見たことがある飼い主さんは多いでしょうし、人間しか夢をみないと考えることの方が不自然です。しかし、猫が夢を見ると証明することは非常に困難です。なぜなら猫は人語を喋らないからです。

レム睡眠とノンレム睡眠の話

1953年にレム睡眠が発見され、夢に関する研究はそれまでにも増して活発になりました。レム睡眠とは睡眠状態のひとつで、身体は眠っているため筋肉は緩んでいるが、脳が活動している状態を指します。一般的に深い睡眠と考えられています。脳活動に合わせて眼球が急速に動くため Rapid(急速) Eye(眼球) Movement(運動)の頭文字をとってREM睡眠と名付けられました。レム睡眠中の人を起こすと夢を見ていたと証言することが多いとわかりました。

反対に眼球が動かない睡眠をノンレム睡眠と呼びます。ノンレム睡眠は脳の活動が低下しているが、体の姿勢を保つ筋肉は緊張しているのが特長です。レム睡眠と比べ起こしやすい浅い睡眠です。

寝ている猫の脳波を測定した

1967年、フランスの睡眠研究者ジュベーが猫に脳波計をつけ、猫の睡眠についての研究を発表しました。猫の睡眠中にも、一定期間人間同様に眼球が動く現象と、レム睡眠時にでる脳波が確認され、猫にもレム睡眠があることがわかりました。

ジュベーはレム睡眠とノンレム睡眠時の猫の寝る姿勢の違いに気がつきました。レム睡眠時の猫は全身の筋肉が脱力しているので、ゴロンと横になり丸まって寝ます(図1)。

(図1典型的なレム睡眠時の猫)

反対にノンレム睡眠時は姿勢を保つ筋肉は維持しているので、前足を丸めて伏せの状態で寝ています(図2)。

(図2典型的なノンレム睡眠時の猫)

つまり、ゴロンと寝ている間は猫が夢を見ている可能性が高いです。またレム睡眠中の猫は寝言を言ったり、肉球をニギニギ、ヒゲをピクピク、後ろ肢をビクっとさせていることがわかりました。それは夢の中での行動に連動しているのかもしれません。

まとめ

タイトルの質問に対する答えとしては「限りなくイエス」です。「限りなく」というのは、レム睡眠中は必ず夢をみるとは限りませんので、猫に脳波計をつけてレム睡眠を確認しても猫が夢を見ると証明したことにはならないからです。あとは猫に直接話を聞いてないとわかりませんね。

犬やねずみ等、猫以外の殆どの哺乳類でもレム睡眠をすることが確認されています。また、獲物を狩る肉食動物の方が狩られる草食動物よりもレム睡眠が長いという報告もあります。草食動物は肉食動物に見つかる可能性があり、深い睡眠(レム睡眠)をとれないからではないかと考えられています。

ゴロンと寝ているとき、特にぴくぴくっと動いている時は夢をみている可能性が高いです。猫がみる夢の内容はどんなものがあるでしょうか。子猫に戻り甘える、虫を追いかける、カーテンによじ登る、反対に怖い夢を見ている可能性も。寝ている猫の動きから想像してみるのも面白いでしょう。

■著者プロフィール
山本宗伸
職業は獣医師。猫の病院「Syu Syu CAT Clinic」で副院長として診療にあたっています。医学的な部分はもちろん、それ以外の猫に関する疑問にもわかりやすくお答えします。猫にまつわる身近な謎を掘り下げる猫ブログ「nekopedia」も時々更新。