最近、「遺伝子検査ビジネス」という言葉を耳にしたことがないだろうか。以前、乳ガンのリスクがある遺伝子が見つかったハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリーさんが、乳ガン予防として両側乳房切除手術を行ったことが話題となったため、なんとなく言葉だけを聞いたことがある人も少なくないだろう。

遺伝子検査は将来患う病気のリスクなどがわかるというメリットもある反面、受診者にさまざまな負担が伴うという声も聞こえてくる。どういうスタンスで関わっていくのが賢い方法なのかを考えてみた。

最近耳にすることも多くなってきたであろう「遺伝子検査」の効果とは

肥満になりやすい体質なども検査できる

経済産業省によると、親子鑑定などの遺伝子検査なども含めた遺伝子検査ビジネスは、2009年の340社から2012年には740社に急増しているという。今年には大手インターネット企業なども遺伝子検査ビジネスに参入している。

遺伝子検査は、遺伝情報を作っているデオキシリボ核酸(DNA)の配列順序を調べて、その並び方の違いなどから疾患リスクなどを読み取るというものだ。検査価格が下がったために、個人検査が簡単にできるようになったと言われている。

主な検査は、アンジェリーナ・ジョリーさんのようなガンのリスクを知るものや、かかりやすい病気は何か、肥満などになりやすいといった体質かどうかを知る検査などがある。

安易に受けると心理的負担になる可能性も

自分が遺伝的にどんな病気にかかりやすいかを知ることで、発病前に病気を理解し予防や治療において積極的になって、結果的にさまざまなリスクを減らすことができるかもしれない。だが、検査によるデメリットも考えられる。

例えば、ガンのリスクを知る遺伝子検査を受けたとしよう。そこでもし、予想しなかったガンのリスクが結果に出てきたとしたらどうだろうか。

「リスクに立ち向かえるようにライフスタイルを見直そう! 」と前向きに気持ちを切り替えられる人ならいいだろう。ただ、そういった人ばかりではない。実際ガンになっているわけでもなく、将来的になるという確証もないのに、遺伝子的な見地から見たリスクだけで「私はガンになるかもしれない」という気持ちになる人もいるかもしれない。

これはガンだけではない。認知症にしても、リスクを知ることでそれが恐怖やストレスになる可能性もあるということを、心にとどめておくことも必要なのだ。

また、そういった遺伝子のリスクは今後、さまざまな個人情報に影響する可能性がある。そのため、生命保険や医療保険の加入が難しくなったり、就職や結婚にデメリットを与えたりしてしまう可能性も否定できないというわけだ。

そんな遺伝子検査は、「なんだかおもしろそう」「よくわからないけどいろんなことわかるみたいでよさそう」というレベルで検査を受けるのはあまりお勧めできない。では、どんなスタンスで遺伝子検査と付き合っていけばいいのだろうか。以下にまとめてみたので、参考にしてほしい。

対策1 「早めに予防対策」を考えたいときに役立てる

高血圧症かどうか、悪玉コレステロールがたまりやすいタイプであるかどうかといったものは、早い段階での治療や食習慣改善などで予防対策を立てることができる。生活習慣病に関係する項目であれば、早く知ることで食事や運動の習慣などを見直すことで、病気を回避できるメリットがある。

対策2 結果をむやみに怖がらず、予防の目安としてとらえる

結果を見て「こんな病気になるんだ」と落ち込むだけでは、遺伝子検査のメリットはない。遺伝子検査は、現在患っている病気を知ることではなく、これから患うかもしれない疾患のリスクを知る検査なのだ。検査をして結果がわかったら、むやみに怖がるのではなく、「正しく」怖がり、病気の予防に役立てることが肝心。この部分があいまいだと、検査をしても意味がなくなってしまうので注意しよう。

対策3 デメリットがあることも認識しておく

病気のリスクを知ること=いいことと思いがちだが、それだけではない。結果を受け止められない可能性もあるのだ。結果によっては自分が落ち込むなど、デメリットもあることを理解してから検査を受けるのがお勧めだろう。

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