米シカゴ大学は10月22日、「OTS964」という開発中の治療薬に肺がんを消滅させる効果があることを確認したと発表した。

同研究成果は同大学の中村祐輔教授らによるもので、10月22日付け(現地時間)の米医学誌「Science Translational Medicine」に掲載された。

「OTS964」は中村教授のがん遺伝子に関わる成果を基に設立されたベンチャー企業であるオンコセラピー・サイエンスが開発したもの。同薬は、がんを発生・増殖させるとされる「TOPK」というタンパク質の働きを阻害することができる。

今回、肺がん細胞を持つマウスを作成し、2週間にわたり「OTS964」を投与したところ、腫瘍が縮小したほか、投与後も縮小を続け、6匹中5匹で完全に消滅したという。

「OTS964」より以前に開発された「OTS514」という薬においても、がんに対する効果が報告されていたが、赤血球や白血球の生成に悪影響を与えるなど、副作用が課題となっていた。同研究グループは薬をリポソーム製剤とすることで副作用を小さくすることにも成功した。

「TOPK」は乳がんなど、さまざまながんで発現するため、今回の成果は肺がん以外のがん治療に対しても活用が期待できるとのことで、2015年秋には人を対象とした治験を開始する予定だという。

「OTS964」が「TOPK」を攻撃する様子を表した図(C)The University of Chicago Medicine