日立製作所は10月20日、石英ガラス内部にBlu-ray Disc並みの記録密度となる100層のデジタルデータを記録・再生することに成功したと発表した。

同成果は、同社と京都大学大学院 工学研究科の三浦清貴研究室によるもの。詳細は、10月20日から台湾で開催される光ストレージに関する国際シンポジウム「International Symposium on Optical Memory(ISOM2014)」にて発表される予定。

今回、石英ガラスの奥深くに保存されたデータを再生する際に生じる、他層のデータの映りこみに起因するノイズの低減技術を新たに適用することで、100層という多層でのデータ記録・再生が行えることを検証した。

具体的には、球面収差補正レンズの適用による、高品質なデータの記録・再生と、ノイズ除去再生アルゴリズムの適用による再生エラーの低減により実現した。データを記録するために石英ガラスの奥深くの記録層へ光を集光すると、その集光スポットには球面収差と呼ばれる、スポット品質を劣化させる現象が発生する。この劣化した品質のスポットでドットを形成する場合、レーザを強める必要があるが、強度の高いレーザで得られる集光スポットは石英ガラスの奥行き方向に伸びてしまうため、他の記録層付近にもドットが形成され、再生時のノイズの要因となる。今回、球面収差補正レンズを採用することで、レーザの強度を高めることなく記録時のスポット品質の劣化を抑制し、奥深くにある記録層にもドットを形成できることを確認した。さらに、再生に用いる光学顕微鏡にも収差補正レンズを適用することで、高品質の撮影画像が得られることを確認したという。

また、光学顕微鏡で撮影した画像からデータを再生する際には、ドットを"1"、ドットが生じない部分を"0"としてデジタル信号へ変換する。この記録層が増えるにつれて、石英ガラス内部の奥深くにある記録層を撮影する際に、他層に記録されたドットの映りこみに起因するノイズが、顕著になることがわかった。そこで、このノイズへの対策として、ドットとノイズの識別に、その面積(サイズ)の情報を利用する画像処理アルゴリズムを適用した。一定のサイズを満たさない画像信号はノイズとみなし除去することで、再生信号のエラー率を実用化の指標となる10-3よりも小さくできることを確認したとしている。

これらの技術により実現した、層間距離60μmで、石英ガラスの両面から50層ずつ、計100層の記録と再生は、Blu-ray Discと同等の記録密度1.5GB/インチ2が可能となること示している。今後、さらなる記録密度の向上により、実用化をめざした実証実験を進めていくとコメントしている。

また、この石英ガラス記録技術が3億年のデータ保存寿命を有することを活かし、画像を描画した石英ガラスを宇宙機に搭載することが決定された。九州工業大学と鹿児島大学が共同開発した、はやぶさ2相乗り小型副ペイロード「しんえん2」に、3億年後へのメッセージを込めた画像・文字列を描画した石英ガラスが搭載される。

同技術によるデータ再生のプロセス