日立製作所は10月20日、京都大学大学院工学研究科 三浦清貴研究室と共同で、石英ガラス内部に、ブルーレイディスク並みの記録密度となる100層のデジタルデータを記録・再生することに成功したと発表した。

今回、石英ガラスの奥深くに保存されたデータを再生する際に生じる、他層のデータの映りこみに起因するノイズの低減技術を新たに適用することで、100層という多層でのデータ記録・再生が行えることを検証した。

石英ガラスは、耐熱性と耐水性にすぐれており、1000℃で2時間加熱しても保存データの劣化がないことが実証されている。これより、石英ガラスを用いたアーカイブが3億年を超えるデータ保存にも耐えうることを示しているとして、今後は歴史上重要な文化遺産や公文書、個人が後世に残したいデータなど、新たな長期保存技術として活用が期待されているという。

具体的には、球面収差補正レンズを採用することで、レーザーの強度を高めることなく記録時のスポット品質の劣化を抑制し、奥深くにある記録層にもドットを形成できることを確認した。あわせて、再生に用いる光学顕微鏡にも収差補正レンズを適用することで、高品質の撮影画像が得られることを確認した。

また、記録層が増えるにつれ、石英ガラス内部の奥深くにある記録層を撮影する際に、他層に記録されたドットの映りこみに起因するノイズが、顕著になることがわかったことから、このノイズへの対策として、ドットとノイズの識別に、その面積(サイズ)の情報を利用する画像処理アルゴリズムを適用した。

一定のサイズを満たさない画像信号をノイズと見なして除去することで、再生信号のエラー率を実用化の指標となる10-3よりも小さくできることが確認された。

今回、層間距離60µm、石英ガラスの両面から50層ずつ、計100層の記録と再生が行えることが検証された。これは、石英ガラスを用いてブルーレイディスクと同等の記録密度1.5GB/inch2が可能となることを示す結果として、同社はさらなる記録密度の向上により、実用化をめざした実証実験を進めていく。

データ再生のプロセス