京都大学は10月15日、マイクロ流体技術を用いた網羅的・高速・高感度のDNA分析技術を開発したと発表した。

同成果は、同大 工学研究科の新宅博文助教、スタンフォード大学のJuan G. Santiago教授らによるもの。詳細は、独国科学誌「Angewandte Chemie International Edition」のオンライン版に掲載された。

これまで、DNAのハイブリダイゼーションを利用した分析技術は、極微量しか存在しないターゲットを検出するために長時間の反応時間を必要としていた。同技術は、マイクロ流路(1mm以下の代表寸法を有する微小な流路)における等速電気泳動と呼ばれる現象を用いて、ターゲットDNA分子とその捕捉分子で修飾したマイクロビーズを共濃縮し、反応速度を大幅に向上させるものである。この反応速度の向上により、約20分の反応で20時間の反応と同等の検出感度を達成することが可能となったという。また、30分の反応時間を用いた結果と比較すると、約5倍の計測感度を得ることができる。さらに、同一サンプル内に存在する複数のターゲットを同時に定量することが可能であるとしている。

今後、同技術を基にした高速かつ網羅的核酸解析が実現することが期待されるとコメントしている。

(a)開発した高速DNA反応法の概念図。速いイオンと遅いイオンの中間の電気泳動速度を有するターゲット分子とビーズが等速電気泳動法により共濃縮されることにより、ビーズ表面の捕捉分子とターゲット分子の反応が高速化される。(b)試作したマイクロ流路。深さ約130μm。(c、d)ターゲット分子とビーズの共濃縮状態の可視化写真(図b中に示したcおよびdの位置に対応。ピンク:ビーズ、緑:ターゲット分子)、(e)濃縮層内部におけるビーズの流動。この内部流動によりさらに反応が促進される