産業技術総合研究所(産総研)は、二酸化炭素(CO2)とアミン、スズアルコキシド化合物とを反応させて、医農薬品などに用いられる化学物質でポリウレタンの原料として有望視される芳香族ウレタンを高収率で得る新しい反応プロセスを開発したと発表した。

同成果は、産総研 触媒化学融合研究センター 触媒固定化設計チームの崔準哲 主任研究員、安田弘之 研究チーム長らによるもの。同成果の詳細は 2014年10月16~18日に開催される「第44回 石油・石油化学討論会」で発表される予定。

ポリウレタンは世界で年間1900万トン生産されているとされるが、その製造には猛毒で腐食性の強く、「化学兵器の禁止および特定物質の規制などに関する法律」で規制される「ホスゲン」が用いられており、より環境に調和した製造プロセスの実現が求められている。

また、ホスゲンを用いない合成法としては、アミンと炭酸ジメチルとの反応で得られるウレタンを熱分解する方法が知られているが、同合成法では別途炭酸ジメチルの合成が必要であり、反応プロセスも多段階となるため、より直接的なウレタン合成法の開発が望まれていた。

これまで産総研では、安価で豊富に存在するCO2を原料に、廃棄物を生成せず一段階でウレタンを合成する反応プロセスの開発に取り組んでおり、これまでにアセトンジメチルアセタールの存在下で、スズあるいはニッケルを含む化合物を触媒として用いると、CO2とアミン、アルコールから高収率でウレタンが得られることを報告していた。しかし、同法ではポリウレタン原料の元となる芳香族ウレタンを合成することができなかったという。

そこで今回、研究グループではアルコールの代わりにスズアルコキシド化合物を用いることで、触媒を使わないでCO2と芳香族アミンから高収率で芳香族ウレタンを合成することに成功したという。

なお、今回開発された合成法では、スズアルコキシド化合物をアミンと同量以上用いるものの、反応後にスズ残留物を回収し、水を取り除きながらアルコールと反応させるとスズアルコキシド化合物が再生し、次の反応に再使用できるため、反応プロセス全体で消費されるのはCO2と芳香族アミン、アルコールだけであり、化学式上の副生成物も水だけという利点があるほか、原料などに塩素を一切使用しないことも特長だと研究グループでは説明しており、今後、反応条件を最適化することで、反応のさらなる効率化を図るとしているほか、さまざまなアミンやアルコールへの適用性について検証するとしている。さらに、スズアルコキシド化合物の再生条件の最適化や、スケールアップの検討も進め、早期の実用化を目指すという。

従来のポリウレタン製造法と今回開発した芳香族ウレタン合成法

二酸化炭素と芳香族アミン、スズアルコキシド化合物からの芳香族ウレタン合成