東芝は9月26日、Bluetooth Low Energyなどの低消費電力無線通信向けの高周波発振回路を開発したと発表した。

詳細は、イタリアで開催されている半導体国際会議「ESSCIRC」にて発表された。

無線通信ICの要素回路の中でも、高周波発振回路は基準となる高周波信号を生成する回路である。一般的に、発振回路に求められる重要な性能の1つである雑音特性と消費電力にはトレードオフの関係があるため、発振回路の消費電力の削減は困難となっている。そのため、高周波発振回路の低雑音化、低消費電力化に関する技術は、現在まで盛んに研究・発表されている。低消費電力化に関しては、電流の削減を中心とした低消費電力化が進められてきているが、消費電力は電流と電圧の積で決まるため、徹底的に消費電力を小さくするためには電源電圧も低電圧化する必要がある。

近年では、新しい動作モードを有する高周波発振回路の構成が提案されており、中でも、製造プロセスの微細化によりトランジスタをスイッチング動作させるD級発振回路が実現できるようになった。この発振回路は、低い電源電圧においても優れた雑音特性が得られるという特徴を有するが、その消費電力を極限まで抑制するためには、電源電圧を可能な限り低くすることが必要となる。

そこで今回、スイッチング動作するD級発振回路において、その電源電圧を動的に制御することにより、トランジスタの閾値電圧よりも低い電源電圧での発振動作を可能とし、発振回路の極低消費電力化を実現した。動的制御には発振回路の電源供給に用いられるレギュレータ回路を利用し、発振回路起動時には発振動作を開始させるために高い電源電圧を発振器に供給して、発振動作開始後にトランジスタの閾値電圧よりも低い電源電圧に制御を行う。D級発振回路は電源電圧の3倍程度の大きな出力振幅が得られるという特徴を有するため、発振動作開始後には閾値電圧よりも低い電源電圧でも発振動作を維持でき、発振回路動作時の極低消費電力化を実現した。そして、最先端プロセスである28nm CMOSプロセスを用いてチップの試作を行い、低消費電力無線回路に要求される雑音性能を満たしつつ、171μWという低消費電力での発振動作が得られたという。

また、回路がオフの時のリーク電流低減も重要となるため、今回の試作ではトランジスタの閾値電圧の高い(LP)プロセスを用いている。提案する動的制御により、閾値電圧以下の電源電圧での発振動作が可能となるため、リーク電流の抑制と低消費電力化の両立が可能となった。さらに、低電源電圧での動作が可能となるため、DC/DCコンバータやエナジーハーベストといった電源回路と組み合わせた場合に、DC/DCコンバータ入力の低電流化、ハーベスタからの直接電源供給といった無線通信IC全体の効率改善にも有効な技術になるとしている。

なお、同回路は、微細化製造プロセスの進展に適しており、極めて低消費電力での発振動作が可能である。今後、同回路に加え、他の要素回路、無線システム全体での極低消費電力化を進め、3年後に極低消費電力無線ICの実現を目指していくとコメントしている。