日中の学術交流を進める日中大学フォーラムが9月10日、東京都渋谷区の国連大学ウ・タント国際会議場で開かれた。中国の30の大学や研究所などから100人以上の参加者を含めて日米の大学関係者ら約350人が一堂に会し、議論した。主催は、科学技術振興機構(JST)中国総合研究交流センターで、2010年に第1回を東京で開催してからほぼ毎年開かれ、日中の大学の交流の場となっている。東京での開催は3年ぶり。

今年のテーマは「イノベーション創出に向けた大学と企業の使命」。21世紀はアジアの世紀といわれる。その成長の原動力になるのが科学技術のイノベーションという問題意識で企画された。主催者あいさつでJSTの中村道治理事長は「このフォーラムは日本と中国の大学をつなぐプラットフォームだ。日中関係が厳しいなかでも、学術交流の灯を絶やさず、少子高齢化や環境問題、防災などの共通の課題に手を携えていこう」と語った。また、中国科技協会の陳剣・国際連絡部副部長は「未来の産業に向けてイノベーションシステムの構築が必要だ。日中の大学や企業の協力をさらに上げていきたい」とあいさつした。

基調講演では、日本かおり研究所の金子俊彦代表取締役が、北海道のトドマツの枝や葉から採取した精油成分が二酸化窒素を無害化するなど、空気浄化剤として使えることを発見した研究を基に、産学官連携で製品化した事例を詳しく報告した。中国側からは、李俊傑・大連理工大学副学長が中国のこの20年間の大学政策の変遷を紹介して、大学でもイノベーションを担う機運が高まり、日本の大学や企業との連携も進めていることを明らかにした。

後半のパネルディスカッションでは「産学連携が拓く21世紀アジアのイノベーション」をテーマに、アモイ大学、北京大学、上海交通大学、信州大学、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の5人がそれぞれの産学連携を発表して、議論した。司会の角南篤・政策研究大学院大学教授は「産学連携は多様化し進化してきた。国境を越えた協力も進んでいる。産学連携をどう加速していくかは、日中の重要な政策課題になっている。互いに学びたい」と訴えた。フォーラム全般に、日中関係が厳しいときほど、日中の大学の交流を続け、協力の機運を維持しようとする声が多かった。