カルピスは9月8日、同社保有の乳酸菌「Lactobacillus gasseri CP2305株(L.gasseri CP2305株:プレミアガセリ菌)」が、腸から脳への神経伝達を通じて中枢神経へ働きかけること(脳腸相関)で、整腸効果や安眠効果などの有益な生体機能調節作用を発現することを確認したと発表した。

徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ストレス制御医学分野の六反一仁教授

同成果は、同社ならびに徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部ストレス制御医学分野の六反一仁教授らによるもの。詳細は、9月2日にオランダで開催された第11回国際乳酸菌シンボジウムにて発表された。

近年の研究にてプレミアガセリ菌は、リラックス効果や安眠効果、便秘・下痢の改善効果など有益な生体調節機能を発現することを確認しているが、これら効果がどのようにして生じているかについては、「脳腸相関」の概念を用いた推定にとどまっており、正確な説明は行われていなかったという。

そこで、同社発酵応用研究所と六反教授らは共同で、プレミアガセリ菌による「神経活動の変化」や「遺伝子発現変化」「脳内血流量の変化」「副腎交感神経活動ならびにホルモン分泌量の変化」「大脳後頭葉の血流変化」の測定を実施した。

「神経活動の変化」では、電極を使用し、プレミアガセリ菌を摂取したCRF(副腎皮質刺激ホルモン放出因子)誘発下痢モデルラットの迷走神経求心枝と骨盤神経の活動電位を測定したところ、腸からの情報を脳に伝える腸迷走神経求心枝活動の上昇を確認したほか、ストレス負荷時に腸機能を司る骨盤神経活動の回復を確認したという。これらの働きが、便秘や下痢症状の改善に貢献していると考えられるという。

腸からの情報を脳に伝える腸迷走神経求心枝活動の上昇(左)と腸機能を司る骨盤神経活動の回復(右)

「遺伝子発現変化」では、同様にプレミアガセリ菌を摂取したモデルラット群と摂取しないラット群に対し、CRFを投与後、4時間における各臓器内での遺伝子発現の変化を測定。大腸の中でも口から遠く肛門に近い部分となる「遠位結腸」では、プレミアガセリ菌を摂取していないラットと比較し、炎症に関わる遺伝子の発現が大きく減少したほか、水分の移動に関わる遺伝子の発現が抑制される結果となった。これらの働きが、下痢症状の改善に影響し影響しているという。

ラットの各臓器における遺伝子発現変化

「脳内血流量の変化」の測定は、プレミアガセリ菌を摂取した「ストレスを自覚する成人」を対象に実施。摂取期間前後において、脳の基底核の血流を画像化して測定したところ、ストレス応答や自律神経活動に関わる基底核の血流が抑制されており、摂取後では活動が相対的に低くなることを確認した。

基底核血流量画像(左)と基底核血流量比較(右)

また、「副腎交感神経活動ならびにホルモン分泌量の変化」では、プレミアガセリ菌を摂取したCRF誘発下痢モデルラットの副腎交感神経の活動やホルモン分泌量の変化を測定。電極を使用し、副腎交感神経の活動電位を測定したところ、脳腸相関を通じて急性期のストレス応答に関わる副腎交換神経活動を抑制していることが判明したという。また、HPA軸を通じて副腎皮質より遊離されるストレスホルモンのコルチコステロンを抑制していることも確認したと発表した。

これらの変化が、ストレス感受性の低下をもたらしていると考えられる。

急性ストレス応答に関わる副腎交換神経抑制(左)と血中コルチコステロン量の抑制(右)

「大脳後頭葉の血流変化」では、プレミアガセリ菌を摂取した「ストレスを自覚する成人」を対象に実施。摂取期間前後において、大脳の血流を画像化して測定したところ、第8領域の血流量が有意に抑制されていることが判明した。同部位は、睡眠や行動を支配すると考えられており、プレミアガセリ菌の摂取により、行動が穏やかになり、睡眠しやすい状態となった可能性が考えられるという。

大脳第8領域血流量画像(左)と大脳第8領域血流量比較(右)

カルピスは、同検証により、「プレミアガセリ菌が、脳腸相関を介した作用の結果、整腸効果や安眠効果などの有益な生体機能調節作用を発現させること」を実証したとしたほか、「同作用が生菌・殺菌ともにほぼ同様に確認でき、菌体成分が有効性を示すこと」も確認したという。

なお、同日に行われた報道陣向け発表会にて同社は、「現在、プレミアガセリ菌を含む製品の販売は行っていないが、近日中に、何かしら報告できる」としている。