東北大学は9月4日、バイオテンプレート技術と融合して、高均一・高密度・無欠陥の6層積層した3次元GaAs/AlGaAs量子ドットを作製することに成功した。さらに、この量子ドットを用いてLEDを作製し、電流注入によるLEDからの発光を実現したと発表した。

同成果は、同大 原子分子材料科学高等研究機構(AIMR)、および流体科学研究所(IFS)の寒川誠二教授、肥後昭男助教らによるもの。北海道大学大学院 情報科学研究科の村山明宏教授、東京大学大学院 工学系研究科の中野義昭教授らと共同で行われた。詳細は、9月7日からスペインで開催される「IEEE 24th International Semiconductor Laser Conference」にて発表される。

GaAsなどの化合物半導体は、シリコンに比べて光の発光効率や吸光効率が極めて高く、特に化合物半導体の量子ドットレーザは、ナノスケールの構造から生じる量子効果によって、より単色化され高強度な光を低消費電力で温度の影響少なく発光できることが期待され、その実用化が精力的に検討されている。しかし、従来の加工法では、微細化に限界があるばかりではなく、脆弱な化合物半導体では激しく欠陥が生成されるため、発光効率が大きく劣化してしまうという問題点があった。また、損傷を回避するために開発された量子ドット作製法では、サイズや密度、位置などの制御が難しく、高効率な発光の実現や発光波長の制御が不可能だった。

研究グループは、鉄などの金属微粒子を内包したたんぱく質が、特殊な処理をした表面に自発的に規則正しく配列した構造を作る性質を用いて、金属微粒子を化合物基板の上に面密度1×1011cm-2と高密度に、20nmの等間隔で配置した。その後、たんぱく質だけを除去して金属微粒子を加工マスクとして中性粒子ビームによる無損傷エッチングを行うことにより、ナノメートルオーダーの欠陥のないGaAs/AlGaAsが6層に積層した柱状の構造(ピラー構造)を20nm間隔で、6×1011cm-3と高密度に配列した構造を形成できたという。

今回の研究により、作製された高均一・高密度・無欠陥の積層GaAs/AlGaAsピラー構造は、量子ドットLEDおよびレーザにおける量子ドット構造として有望である。また、従来に比べて10倍以上の発光強度が期待され、究極のグリーンテクノロジーといわれる量子ドットLEDやレーザの実現に向けて大きく前進したとコメントしている。

バイオテンプレートと中性粒子ビームを用いた量子ドット作製技術

バイオテンプレートと中性粒子ビームによるGaAs/AlGaAs量子ナノピラー構造と有機金属気相成長法で作製した量子ドットLED構造