東北大学は9月3日、室温から絶対零度近くの極低温(0.1ケルビン、–273℃)まで、世界最速で冷却できる物性測定用冷凍機(ADR、断熱消磁冷凍機)を開発したと発表した。この成果は同大学金属材料研究所の青木大教授の研究グループと日本カンタム・デザインの共同研究によるもの。

物性研究、材料開発の分野において、超伝導や磁性などの基本的性質を明らかにするには、極低温が必須の条件とされている。通常、0.1 ケルビン以下の極低温を得るためには、希釈冷凍機という液体ヘリウムを利用する大型の冷凍機が使用され、室温から極低温まで温度を下げるのに数日から一週間程度の時間が必要となる。

今回開発された冷凍機は、2ケルビンまで磁場中で予備冷却を行った後、ADRを断熱状態で磁場を下げることで、0.1ケルビン以下の極低温に2時間以内に到達することができる。これは従来の50~100倍のスピードにあたり、物性測定用の冷凍機としては世界最速とのこと。また、従来の冷凍機に比べて、機械的動作が不要で原理が単純なため、故障が無く半永久的に使用でき、液体ヘリウムを必要としないため、環境にも優しい技術だという。

同研究グループは「極低温を短時間で得られることで、新規超伝導体の物質開発、磁性材料の開発などにつながる」とコメントしている。

今回開発された小型の断熱消磁冷凍機

ADRを用いた冷却過程。室温から極低温まで約 2時間以内に到達できる。