日本の夏の風物詩・花火のデザインをどう思いますか?

毎年人気の諏訪湖祭湖上花火大会や大曲の花火など、今年も全国でさまざまな花火大会が開かれました。私たちの目を楽しませてくれるだけでなく、花火師の晴れ舞台でもある花火大会。Web上にもさまざまな観覧記録が公開されており、その美しさを堪能されている様子が伝わってきます。日本人には夏に欠かせない存在である花火ですが、海外の方が見たらどう感じるのでしょうか。

ということで、日本在住の外国人20名に「日本の夏の風物詩・花火のデザインをどう思いますか?」と質問してみました。

■すてきだと思う。(イスラエル/30代後半/女性)
■すてき! 花火はすごいと思います。(ドイツ/40代前半/女性)
■明るい、すてき。(ロシア/20代前半/女性)
■かわいいと思う。(アルゼンチン/30代前半/男性)
■かわいくてきれい。(台湾/40代前半/男性)
■大変きれいです。(ブラジル/20代後半/男性)
■かっこいいと思います。(韓国/40代後半/男性)
■かっこいいと思います。(アメリカ/20代後半/男性)
■かっこいいと思います。(ベトナム/30代前半/女性)
■かっこいいと思います。(ペルー/30代前半/男性)
■ものすごくかっこいい。日本の花火は最高です(スウェーデン/40代後半/女性)
■おもしろいです。(中国/20代後半/女性)

今回はほとんどが称賛の意見でしたが、その中でもすてき、かわいい、かっこいいという回答をまとめてみました。かわいい/すてきは、開いた時の色合いや形(いわゆる「花」の部分)、かっこいいは素材感や打ち上がるまでのロケット的な印象(「火」の部分)に着目したと言えそうですね。

花火にもいろいろな種類がありますが、海外の方々が思い浮かべられるのは、おそらく打ち上げ花火でしょう。日本の打ち上げ花火は「菊花型割物花火」と呼ばれ、丸く大きく鮮やかな花を広げ、花弁の色を変えつつ円を二重三重に描くのが特徴です(「日本の花火」サイトより)。海外の花火的な物といえば中国の鞭炮(爆竹)などがありますが、こちらは美しさよりは儀式の道具のひとつですよね。時間差による形や色の変化、流れ方など造形にこだわった芸術的なものでは、やはり日本に勝るものはないと言えるでしょう。

■伝統的で好きです。(スペイン/30代後半/男性)

前述した「菊花型割物花火」の花火球は、「玉殻(容器)」に花弁になる「星」と点火用の「割薬」を「間断紙」で区切り、作りたい円の数だけ層をつくって完成させます。つまり、大きな円の花火は玉の直径も大きくなるので、つくるのも打ち上げるのも一苦労なのです。丸く美しい花火にするためには火薬の量や包んだ玉皮の強度などさまざまな要素が絡むため、調節が非常に難しいそう。さらに、火を伝える「導(みち)」も八重芯菊・三重芯菊などの種類があり、花火の仕組みは時代を追うごとに複雑になっていると言えます。

日本の花火の使用は室町時代が最初と言われますが、この球型花火の製造技術は明治時代に始まったものだとか。それ以降、現代に続くまで職人による「いかに美しい同心円を表現するか」「いかに大きく美しい花火の表現をするか」の研究が続いています。

■かっこいいというよりはすごいです。大きな花火や一気に何発も打ち上げるので。ハート形やキャラの形もかわいいです。(タイ/30代後半/女性)
■いろんな形があってすてきだとおもいます。(トルコ/30代前半/女性)
■いろんな種類があってかっこいいです。(フィリピン/40代前半/女性)
■そこまで考えたことがありませんが、一度会社のロゴをデザインした花火を見て面白いと思いました。(オーストラリア/40代前半/男性)

星(花弁)が丸く広がる一般的な打ち上げ花火の「割物」、星が広がらずランダムな方向に飛ぶ「ポカ物」、星が土星などの形を描く「型物」、合図用の「音物」、パラシュートなどが落ちる昼用の「袋物・吊物」と、花火には時間と形で大きく5つに分けることができます。その中で、回答の「いろんな形」を見せるのは前3つ。最近ではスマイルや蝶などを表現する「創作物」という伝統的な円型にとらわれないデザインも増えているようです。

また、花火大会では複数の花火玉を組み合わせる「仕掛け花火」の手法もあり、見え方の種類はさらに増えます。例えば、瀧を模した「ナイアガラ」や連射の「スターマイン」などが有名ですよね。ちなみに、回答にある企業ロゴもこの仕掛け花火の一種かと。文字や絵を型どった枠上に焔管(火薬を詰めた管)を置いて一気に燃焼させる「枠仕掛」がそれです。

■感動的です。(チュニジア/40代後半/男性)
■色が派手だと思う。(イギリス/20代前半/女性)
■鮮やかです。(マレーシア/30代前半/男性)

花火の色は金属化合物を燃やして表現しています。色ごとの素材で言えば、赤は炭酸ストロンチウム、緑は硝酸バリウム、黄はシュウ酸ソーダや炭酸カルシウム、青は花緑青や酸化銅、銀(白)はアルミニウム、金はチタン合金などが一般的。最近では色表現の技術も進化し、混合によるピンクや紫、水色やレモン色などの微妙な中間色も表現できるようになりました。また、マグネシウムの追加により、鮮やかさの度合いも向上しているそうです。

また、花弁が打ち上がった後で色を変える「変色星」は日本特有の技術。球の外側から燃えていくことを想定し、中心材から異なる火薬をまぶしてつくるのです。一瞬の美しさのために、実はたくさんの時間と手間、工夫が重ねられているのでした。

ちなみに、「たまや」「かぎや」というかけ声のもとになっているのは、日本の花火界を江戸時代にけん引した花火師の屋号。鍵屋は十五代目の女性が現在も活躍中だそうですから、まだまだこれからも美しい作品が期待できそうですね。

すっかり秋の気候となり、ひと通りの花火大会は終わってしまいましたが、浴衣に続き、過ぎゆく夏を惜しむテーマのふたつめとして、花火を取り上げてみました。今や海外でも花火大会が開かれるとはいうものの、あの派手なだけではない、情緒やはかなさのある豊かな表現は日本ならでは。海外のみなさんも、そんな豊かな表現に興味を惹かれているのかもしれません。